逃走ルートなんかも検討しちょった方がいいやろね

「そこは再確認せんにゃならんわなあ。……っちゅうか、もっと早く確認しておくべき事やったね」

 あははは。言われてみれば、そうだよ。――


「うっかりしちょったわ。でもさっき卑弥呼様は、しばらく天界高天原に行くかイ不在や……っち言うちょった。今更確認出来んとよ」

「だよね。どうしよう……」


「まあ、でも卑弥呼様は、俺達の推測を否定せんかったじゃろ!? つまり生目一号墳か、瓜生野墳丘墓のどっちかで間違いねえやろ」

「そうだよね。でもどっちが正解かは判らないから、当日は両方に行く……ってことになるかなあ」


「生目古墳群は国指定史跡だから、多分国有地だよね」

 智ちゃんが敬太郎君に尋ねる。

「いや、分からん。でもまあ県か市か、公有地なのは間違いないやろね」

 と、敬太郎君。


「逆に瓜生野墳丘墓の方は、多分、史跡指定されていない私有地だよね」

「うん」

「にゃるほど~。……ってことは、土地の持ち主にバレて訴えられなきゃ大丈夫かも~」

 ほうほう。

 じゃあ、余程酷い事をやって持ち主に怒られない限り、注意を食らう程度で済むのかも。少なくとも国指定史跡を荒らすケースとは、別扱いか。――


 雄治はふと立ち上がってキッチンに行き、コーヒーメーカーをセットする。美味しそうなモカの香りが漂う中、作戦会議が始まった。

「雄治のクルマはちと目立つから、そこが心配やな」

 熱いコーヒーを啜りつつ、敬太郎君が指摘する。


そうだよなあじゃよなあ

「当日までに現地下見をやっちょくべきやろね。先に生目一号墳に行くとして、そっから瓜生野墳丘墓への移動ルートと、クルマを停める場所を探しておく……と」

「おう」

「それから念の為、逃走ルートなんかも検討しちょった方がいいやろね」

「了解」


 智ちゃんは智ちゃんで、自分のノートPCを立ち上げてどこかにメールを送り始めた。

「何してるの?」

「いや。当日は一応、色々準備が必要でしょ!? 服装とか装備とか……。だから知り合いのサバゲー好きとかミリオタ君達に、アドバイスを依頼したの~」


 うわ。そんな人脈もあるのか。やっぱ智ちゃんは色々謎だよなあ。――

 程なくピロンピロンと着信音が鳴り、智ちゃんPCが次々とメールを受信する。雄治は自分の液晶モニターに智ちゃんPCを接続。四人でモニターを囲みつつ検討を行った。


 作戦会議は夜中過ぎまで続き、漸く解散。

 あたしも自宅に帰り、そのまま爆睡。そして翌朝も早めに起きると、再び雄治のアパートに向かった。

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