従来のアカデミズム主導の邪馬台国論がほぼ崩壊

 あたし達歴史研究会のWebサイトは、毎日六桁ページビューという繁盛ぶりを見せた。


 また、全国区の「天野紗耶香ファンクラブ」が出来た。加えて、

「パンチラミスコン女王だけでなく、もう一人すっごくカワイいコがいる」

 と、Webサイトに掲載している智ちゃんの写真も話題となった。

「実はあのコこそ、ミスコン候補第一位だったけれど、何故か早々に出場辞退した」

 とSNSで情報が流れたため智ちゃんにも関心が集まり、たちまち「山本智美ファンクラブ」も結成された。


 あたしはすかさずバイト先の県史編さん室に提案し、あちらの新サイトの県内史跡紹介写真に、あたしと智ちゃんがモデル出演した。これも評判となり、新サイトへのアクセス数が大幅に伸びた。

 こうして四人の目論見通り、あたしと智ちゃんが見事広告塔……というか客寄せパンダ(笑)の役割を果たし、あたし達の「邪馬台国宮崎説」が脚光を浴びることとなった。


 某巨大掲示板では、我が宮崎説を中心とする邪馬台国論争が一気に盛り上がった。これにあたし達四人も参戦し、連日アツい議論を展開した。半月と経たないうち、邪馬台国論争は一種の社会的ブームにまで発展した。


「従来の学説は、思いの外胡散うさん臭い」

 というのが世間の共通認識となり始めた。同時にあたし達の主張する、

「伊都国は福岡県糸島ではない可能性」

 が市民権を得た。元々そう主張する人々もどうやら存在したらしいが、認知度が極めて低かった。今回のブームによって、そこにスポットライトが当たった。また「伊都国=福岡県糸島」ではない・・・・とすると、畿内説にしろ北部九州説にしろ一気に崩壊してしまう……という認識も合意形成された。


「古墳の築造年代も、実はかなりあやふやだ。大抵は学者の想像に過ぎず根拠稀薄で、結局は掘ってみなければ判らない」

 という事実についても、認識が高まった。そのため全国の考古学者や博物館に対し、

「どうして○○古墳は○世紀築造と見做されているのか」

 と、質問が殺到しているらしい。それらの回答についても某巨大掲示板等に逐一アップされ、議論を呼んだ。結局、

「古墳の調査研究については、地域によって大きなバラツキもあり、そういった問題がアカデミズムの邪馬台国論にも影響。客観性を損ねている」

 といった問題も浮き彫りとなった。


 こうして半月程度で、従来のアカデミズム主導の邪馬台国論がほぼ崩壊することとなった。アカデミズムの様々な思惑により、邪馬台国論、ひいては古代史観が大いに歪められていたことも、次第に世間が認識するところとなった。


 崩壊した邪馬台国論の完全見直しが、某巨大掲示板を中心に活発化した。「宮崎説」が、自然と論議の中心にあった。各地の「ご当地邪馬台国」論者も執拗に頑張っていたが、やはり依然、我が宮崎説のアドバンテージは揺るがなかった。雄治が言うように、考古学的裏付けと古代史観こそが重要だと痛感させられた。


 テレビ局はこのブームに便乗し、邪馬台国論争の特番を組んだ。あたし達四人は二局に招かれ出演し、自説を展開した。

 そんな一〇月上旬のある日、

「纏向箸墓古墳に、何者かが侵入した形跡が見つかった」

 というニュースが流れた。――

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