十、
優勝すべくして優勝した、っちゅう感じやね
「昨今の、マスコミの質的低下には大いに危惧を抱かざるを得ない」
と、敬太郎君が深刻な表情で言う。
何事かと思えば、
「あれはパンチラじゃねえぞ、パンモロや。マスコミたるもの、そこは明確に区別すべきやろ」
――パンモロの方が圧倒的に価値が高い。パンチラなんぞと同一視するんじゃねえ!!
だそうである。相変わらず、秀才の冗談はよく解らない。――
あの翌朝の地方紙朝刊に、学祭ミスコンの様子が掲載されていた。
「大学生離れした、見事なプロポーションとファッショナブルな衣装が観客の目をひいたが、登場直後に転倒。ところが、そのパンチラハプニングに動揺することなく、むしろ観客の心を掴んで度々笑いを誘った。また見事なオーボエの演奏でシリアスな一面を見せる、イメージのギャップを巧みに演出した見事な作戦勝ち」
……とのこと。午前中に行なわれた若手お笑い芸人のステージ以上に、笑いを取っていたと書かれている。
いやいや。別に作戦じゃないんですけど。
「え~っ、違うよ。作戦通りだよ」
と、プロデューサー智ちゃんは首を横に振る。
「ちゃんと徹底的に、ミスコン戦略を練ってたんだよ~。あ、勿論転倒とパ○ツのモロ出しは、完全にハプニングだけどね。でも紗耶香ちゃんがむしろそれを活かして、あたしの想定以上に上手く振る舞ってくれたわけよ。ホント、カンペキだったよ」
「じゃっどじゃっど~。途中で
と、雄治が相槌を打つ。
へ!? ステージ下で野次ってたのは、雄治だったの?(怒)
あたしは膨れっ面で雄治を睨む。
「そうそう。あれに紗耶香ちゃんが上手く対応したのも、すっごく良かったよね~。あたしより紗耶香ちゃんの方がミスコン向きだ……って話、正しかったでしょ!?」
と、智ちゃん。
「もし、あたしが出場していたら、コケた時点でゲームオーバーだったもん。咄嗟にあんなに上手く振る舞えないよ。紗耶香ちゃんみたいにクールビューティーとお茶目キャラと、シリアスイメージとを巧みに使い分ける……とか絶対ムリ~。結局、紗耶香ちゃんだから優勝出来たんだってば」
「そうやな。優勝すべくして優勝した、っちゅう感じやね」
敬太郎君も頷く。
「
と雄治が言う。皆、その意図をすぐに察する。
あの直後、敬太郎君、雄治、あたしと智ちゃん、それにプロジェクトチームの女子四人全員で居酒屋へ行き、打ち上げを行った。その時点で既にミスコンの観客が何人か、あたしのパン○丸出しシーン動画をネットにアップしていて、たちまち視聴者カウントが上昇していた。
地元テレビや新聞記事による相乗効果で、それらの動画やミスコン用イメージ動画のアクセス数が伸び続け、数日のうちに大変な話題となっていた。そのせいか、急遽その週末地元テレビ局に呼ばれて、ローカル番組に出演した。
それらと連動し、我が歴史研究会サイトへのアクセス数も大幅に伸びた。パンチラ学祭ミスコン女王は、見事邪馬台国宮崎説の広告塔の役割を果たした。
同時に、ミスコン直前に県史編さん室サイトとの連携を行っていたことが奏功し、そちらのアクセス数も連動して伸びた。たった一週間で、様々な状況が一変した。
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