ポロリしないの~っ?
日差しが強い。
いや、強いなんてレベルではない。季節はまだ九月上旬、真夏日。快晴のカンカン照りである。ここ宮崎に、太陽がフルパワーでエネルギーを照射する。
おまけにステージ上で、緊張状態が続いている。汗が止まらない。
なので、ちょっとしたハプニングが起きた。あたしのデコシールメイクが、汗で剥がれ落ち始めちゃったのよね。
一枚目が剥がれ落ち、慌てて拾い上げる。それがウケて、ステージ下で笑いが起こった。ステージ上でQAシーンが続く中、また一枚、そしてまた一枚……とシールが剥がれ落ちる。結局全部剥がれてしまい、元の素直な美女メイク状態に戻った。観客がざわついた。
控室に戻ると、プロジェクトチームの三人があたしに飛びついて来る。
「いいよいいよ~。優勝が見えてきたよ~♪」
う~ん。よく分からん。――
顔の汗を拭い、ゆっこにメイクを直して貰った。それから楽器ケースを開け、オーボエを取り出す。
コップの水に浸しておいた二枚のリードをオーボエにセットし、音を鳴らす。出場者が次々とステージ上で特技を披露する間、あたしは唇とリードのコンディションを整えるべく音を鳴らし続けた。
で、いよいよあたしの出番。オーボエを抱えてステージ
ステージ中央に立つと呼吸を整え、それからおもむろにオーボエを構えるとワーグナーオペラ「ローエングリン」の、「エルザの大聖堂への行進」の主題を
ステージ下は、完全に静まり返った。
選曲と構成は、遺跡巡り旅行の際に雄治と一緒に決めた。吹奏楽等でも比較的演奏機会の多い、メジャーな曲。主題の旋律はまずオーボエが
スローテンポの、まさにドイツロマン派音楽の真骨頂とも言うべき甘く綺麗な旋律が、ミスコン会場に満ちた。観客全員がオーボエの繊細な音色に耳を傾ける。
二分程で演奏終了。一礼し顔を上げた瞬間、割れんばかりの拍手が起こった。
退出し、控室に戻る。ラストは水着審査。あたしは急いで水着に着替える。メイクを直して貰い、またステージ
程なくあたしの出番となった。登場するなりステージ下から、
「ポロリしないの~っ?」
という声が飛び、笑いが起きた。なのであたしは、ちょっとしゃがんでステージ下にちゃぷちゃぷと水をかける真似をした。ドっと笑いが沸き起こった。
あたしはすぐ立ち上がり、ステージ
みんなはここでポーズをキメたが、あたしは再度、波打ち際で水をすくってステージ下にぶっかけるような真似をし、さらに水鉄砲を撃つ真似をした。ウケた。
どうにか全ての審査が終了した。
蓋を開けてみれば九割という圧倒的得票で、あたしの優勝が決まった。
その晩のNHK宮崎、及び地元民放二局は、
「パンチラ女子大生、学祭ミスコンを制す」
と、あたしの名前入りで一斉に報じた。
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