これぞ大学生活、って感じだよね……

「ちなみにいつまでが弥生時代で、いつからが古墳時代なの?」

「実は、それもさっき生目古墳の人に尋ねてみたの。な~んかいろいろ調べてみても、ハッキリした事が書かれていないんだよね」

 と、智ちゃんが言う。


「まあ、当然かもしれないけど、どこまでが弥生時代でどこからが古墳時代……っていう明確な区切りはないんだって~。全国一斉にドンっと古墳時代に切り替わったってわけじゃないもんね。地域によって早い遅いがあるわけよ。だから郭構造のある古墳が見つかったら、その地域はその時点から古墳時代に入った、と考えるらしいよ」

「あ、なるほどね……」


 あたし達は雄治のクルマに乗り込み、いよいよ西都原古墳群を目指す。

 海岸沿いの一ツ葉有料道路を走る。シーガイアの四五階建てホテルや人工ビーチドームを横目に眺めつつ、南国情緒溢れる陽射しの強いハイウェイを心地良いスピードで北へ向かう。

 ひょろガリながら割と背の高い敬太郎君が、助手席。あたしと智ちゃんが後部座席。スポーツ車なので後部座席は狭い。小柄な智ちゃんには丁度良いみたいだけど、あたしにはちょっと、足元が狭いかな。でもまあ、苦になる程ではない。


 結構な速度で海際を走っているので、風切り音が強い。オーディオからは控えめなボリュームで、R・シュトラウスの「ドン・キホーテ」が流れていたが、ほとんど聴こえなくなった。でも何かすっごく良い雰囲気。気のおけない仲間と一緒に、快晴の日向ひむかの国で自由を満喫してるって感じ。海も、ずっと遠くまで蒼く輝いている。

 うん、やっぱこれが大学生だよね。これぞ大学生活、って感じだよね。……


「今は邪馬台国畿内説が強くて、箸墓古墳が卑弥呼の墓だ、って言われてるでしょ!? で、箸墓は『古墳』だって言われてる。つまり畿内説の学者先生的には、卑弥呼以降が古墳時代って事になるわけよ」

「うん」

「一方九州説の学者さん達は、三世紀いっぱいを弥生時代、四世紀から古墳時代と見做しているみたい。ってことは、卑弥呼は弥生時代の人だ……という認識らしいね。もし、実際に卑弥呼の墓が見つかって、そこに郭構造があった場合は、その時点で認識を改めるつもりみたい」

「なるほどね……」


「だからさ、要するに学者さんによって、『いつから古墳時代だ』って認識が異なるみたいだよ」

「へぇ~~~~」

 そういう事って、どこかにちゃんと明記して欲しいよね。割と重要な話じゃない!?

 ……っていうか、時代的意義が明確に異なるからこそ、時代区分ってのを定めるんじゃないのかな。そこを明確に出来ない、違いを明記出来ないなら、区分する意味がないじゃん。


 有力者の墓に槨がないのが弥生時代、あるのが古墳時代? 槨構造があれば「新たな時代」扱いなの!? バ○じゃない!?

 卑弥呼の墓に槨がなければ卑弥呼邪馬台国は弥生時代、槨があれば古墳時代? なんじゃそりゃ(呆)……


 クルマは有料道路の終点に辿り着き、そのまま県道を西都市に向かって進む。一転、田園風景である。

 四人でワイワイガヤガヤと議論しているうちに、三〇km先の西都原古墳群に到着した。

 時刻は午後の三時前である。クルマを駐車場に停め、四人は西都原考古博物館に入った。

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