六、

遺跡とか博物館に行ってみたいよね……

 あたし達「歴史研究会」のグループウェア掲示板が、にわかに活気を帯びてきた。


 まず、智ちゃんによる、

「伊都国、奴国の比定地について」

 というカキコ。三日ばかし徹底的に学者先生方の説をあらい、

「地名が似ているという点と、伊都国奴国が魏志倭人伝の記述通り隣同士である、という点しか根拠が見当たらない」

 という結論に至ったらしい。他にも考古学的成果に基づく主張も幾つかあったけれど、どれもこれも決め手に欠けるんだとか。なるほどね。――


 あたしは智ちゃんのカキコを見て、行程の謎について考えてみる気になった。早速その旨、掲示板に書き込む。

 すかさず敬太郎君が、

「オレは漢字の読みについて調査中」

 とカキコ。さらにその一分後、今度は智ちゃんが、

「資料を読んでいて『古墳編年』に興味を持ったから、ひとまずそれを調べてみるつもり」

 とのカキコ。


 あれ!? 二人の書き込み元IPアドレスが一緒じゃん。まさかふたり仲良く一緒に作業してる?

 にひひひ。次にふたりと会ったら、絶対からかっちゃろ~っと♪ 昨晩の仕返しだ。ふふんっ(笑)


 ちなみに雄治は、早朝にお父さんの車を運転して都城みやこんじょへ戻ったらしい。昨晩あれだけ飲んでたのに、スゴいね。……

 従兄弟のお兄さんの家に寄って車を貰い、それを運転して新居に戻ってきたらしく、昼前になって、

「邪馬台国時代の政治的背景について、考えてみる」

 と書き込んできた。よくわかんないけど、飲みながら語っていた内容と関係があるのかも。まあいずれにせよ、四人の分担がすんなり決まった。


「先に一度、遺跡とか博物館に行ってみたいよね……」

 という智ちゃんの発案で、週末金曜日の午後はあちこち見学することになった。

 行き先は宮崎市内の生目古墳群、県立博物館、そしてあおき古墳群。雄治がゲットした車に同乗し三ヶ所を回る。昨晩飲み代を雄治が出してくれたお返しってことで、あたし達三人でガソリン代を出す。


 そこまで話がまとまったところで、あたしは午後イチの社会学を受講すべく、ガッコへ顔を出した。

 学内の掲示板を見ると、ウワサの学祭ミスコンの候補者名が貼り出されていた。


 あははは。確かにあたしの名前も挙がってるよ。ってか、あたしの推薦者は三人だってさ。ギリギリ最低ラインじゃん(汗) 要するに雄治が動いたから候補入りした……ってことだよね。

 まあ、そうでしょそうでしょ。普段、オシャレもしないし化粧もほとんどしてないし、地味だもん。


 ちなみにトップは誰かな……とリストの先頭を眺めると、なんと智ちゃんの名前が書かれていた。

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