浴室なら、突然卑弥呼様が降臨しても大丈夫かも

「古史古伝には、神武朝の前に『ウガヤフキアエズ朝』ちうのがあって、五〇何代だか七〇何代続いた……ち書かれちょる。どうやら県北高千穂宮を中心に、宮崎大分に勢力を持っちょったらしい。アマチュア研究家がその辺を詳しく調べちょる」


「なるほど数十代で五八〇年か……。辻褄は合うなあ。何らかの事情があって、大和朝廷は記紀からウガヤフキアエズ朝の歴史を抹消し、あたかもウガヤフキアエズ一代だったかのように記述した、と……」

「じゃっどじゃっど~。しかもそイは宇宙人と地球人、爬虫類人の異種交配種族による王朝やっど~」

「なるほどなあ……」


 店員がやってきた。ラストオーダーらしい。

 あっという間の二時間だよ……。四人は最後の食べ物や飲み物をオーダーする。


「まあ、この日本にも、そげな『謎歴史』があっとよ。こン宮崎も、まさに謎歴史の中心かもしれんとよ。邪馬台国が宮崎にあったとすれば、そン歴史の延長線上にあったわけやろ!? そイを理解せんにゃいかん……っちオイは思うちょる。卑弥呼邪馬台国の歴史が我が国に残っちょらんのも、ウガヤフキアエズ朝抹消と関係があるかもしれんなあ」


 なるほど。――

 いや、ホント深いよ。もっと色々知りたいよ。でも、

「今日はもう時間がないし、続きは次回のミーティングでやろう」

 と、敬太郎君が「締め」を宣言。


「雄治も引越し直後で色々忙しいやろうし、オレらももう少し調べ物の時間が欲しいし、火曜日のミーティングは休みにして、金曜日に持ち越そう」

「了解」


 勘定を済ませ居酒屋を出て、解散した。あたしは丁度良い酔い加減で、二kmばかしのんびり歩いて家に帰った。

 楽しかったよホント。会話の内容も、全部覚えているかどうかアヤシいけど、凄く面白かった。余韻に浸りつつ、入浴する。


 入浴剤の香りに包まれてバスタブでゆったりしていると、ふと雄治の顔が思い浮かんだ。

(あたし、もしかして雄治に惚れちゃったのかな!?)

 昨日来の出来事を思い返しているうちに、酔いも手伝って、次第にヘンな気分になってきた(恥) ……ってか、昨日もムラムラがヤバかったもんね。凄く疲れたから、昨晩はすぐに寝てしまったけど。


 そりゃあさ、あたしも彼氏が欲しいよ。知的で性格の良い彼氏がいい。でもやっぱ、出来ればカッコいい方がいいよね。雄治はその点、見た目に関してはビミョーなんだけどなあ。

 しかしあたしの潜在意識は、雄治にOKサインを出してるっぽい(笑) ヤバい。……


 そっと、胸を撫で回した。

(ダメだこりゃ。完全に、えっちなスイッチが入ってるよ……)

 あたしは立ち上がりバスタブを出て、バスチェアに座るとシャワーのコックを捻る。

(そっか。浴室なら、突然卑弥呼様が降臨しても大丈夫かも。裸なのは当たり前だし、ニオイとかも誤魔化せそうだし……)


 全身に降り注ぐシャワーの刺激が、気持ちいい。――

 雄治に優しく抱きしめられ、さらにはあんなコトやこんなコトや、はたまた絶対他人ひと様に言えないようなコトをされる妄想に浸りつつ、あたしは声を押し殺して喘いだ。そしてあっさり、盛大に達した。


 何故か、卑弥呼様は降臨しなかった。

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