本気で掘ったら何が出てくるかわかんないもんね
「どういうこと?」
「要するに昨日、雄治が言ってた話に繋がるわけやね」
猫背の敬太郎がぐうっと背筋を伸ばし、そしてまた猫背に戻って説明し始める。
学者先生方としては、長く栄えある古代史が明らかになってしまっては、困るのである。自分達の提唱する、ショボい古代史観そのままであって欲しい。
そのためには、
「まあ、そんな思惑やち思うとよ。刻一刻、教科書が大きく書き換わるような、ガチの調査や研究なんかは全く意図しちょらん……と」
「うん」
「そんげな人達が、宮崎を徹底調査するやろか?」
「そっか……」
智美は頷く。
「学者はなるべく宮崎の古代史を
「そうそう。うちの大学に史学科を作ろうなんて、まず考えんやろね」
「現状維持で八方丸く収まる、と……」
「うん。我々シロートにも、アバウトな情報や解説しか与えない。積極的に最新の調査結果や高度な議論を提供しよう……なんて意思はさらさら無い。当然、よく整理されたナレッジベースを構築して一般に提供しようなんて、夢にも考えんやろなあ」
「……」
「それこそが学者先生方の、『政治的な事情』やな」
「にゃるほどねえ……」
智美もたった今、一〇冊以上もの本を読み漁ったばかりである。敬太郎の分析が素直に腑に落ちた。
「そっか。だから、何百年も論争してる筈なのに議論が浅いのか。本を見比べても、進捗ゼロっぽいもんね」
図書館をハシゴして、痛感した。偉い学者の書いた本より、シロートさんの邪馬台国論サイトの方が、余程ハイレベルだったりするのである。
だからこそ、
「この書棚に並んでいる本にかかれている事は、最新の学説なのか。価値ある学説なのか」
という疑問が生じた。敬太郎の分析通りであれば、全て辻褄が合う。勿論あたし達の大学には、何十年経っても史学科は出来ないだろう。
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