それはまあ……よくわからない

 夕食後、紗耶香あたしはリビングでくつろぐ母親に声をかけた。

「お母さんはさあ、時々『見える』って言ってたじゃん」

「うん」

「しょっちゅう見える?」

「見えるよ」

「それって、どういう時に見えるの? 何かした時だとか……きっかけというか、やり方みたいなものがあるの? ほら、例えば降霊術みたいな……」


 お母さんがほんの一瞬、動揺の表情を浮かべたのを、あたしは見逃さなかったよ。


「うん、まあ……あるかもしれない」

「それって、どうやるの?」

「それはまあ……よくわからない」

 あははは。お母さん、な~んか目が泳いでる。


「お祖母ばあちゃんも見えるって言ってたじゃん。お祖母ちゃんのやり方は、聞いたことある?」

「いや、ないけど……。突然どうしたの?」


 今度はあたしの方が慌てた。まあちょっと気になったから、と誤魔化し、教育学のレポート書かなきゃ……と自室に引き込んだ。


 なるほどねえ。――

 あたしは昨晩ムラムラしちゃって、その……アレをした(恥)

 いわゆるその……達しちゃってアタマ真っ白になって、ふ~っと大きく息を吐いた途端、卑弥呼様が出てきた。それがトリガーというか、降霊のメソッドかもしれない。


 お母さんも、実は同じやり方なのかもしれない。だって、やり方聞いたら動揺してたもんね。

 そりゃ何も教えてくれないよね。アレしたら見えるよなんて、恥ずかしくて絶対言える筈ないもん。あははは。


 ということは、あたしも三日後提出の教育学レポートを書き上げるまで、アレ禁止かなあ。

 卑弥呼様が出てきちゃったら、そっちが気になって勉強どころじゃないもんね。当面、卑弥呼様は封印だ。


 ってことはつまり、あと三日間は禁欲生活か。――

 困ったな。ガマン出来ないよぉ(恥)

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