両親との遭遇
――緊急事態です。
高速道路を走行中、緊迫感のある奈々の声が響いた。
「どうした」
草薙が聞く。
――東京に設置してある、4機のEMPレーザーですが、敵のドローンによって3機破壊されてしまいました。
「なんだって!?」
声を荒げる草薙。
「なるほどねー。敵の車両は釣りだった訳だ。EMPレーザー付近の人員を少なくして、ドローンの対応を遅らせたんだね。EMPレーザーは照射まで時間が掛かるから、直接狙われると弱い。はは、また一本取られちゃったね」
などと、呑気に弟切が言った。
――幸いにも、今あなた方の近くに最後のEMPレーザーがあります。至急向かってください!
と奈々が言った直後のことだった。すぐ近くのガラス張りの防音壁の向こう側から、10機ほどのドローンが上昇していった。
「その例のドローンが来たようだ」
朗らかに弟切は言った。
「でも、数が少ないですね」
と涼。
「そうだね。EMPレーザーを破壊するほどの火力を持つドローンだ。特別仕様だから数を用意出来なかったんだろう。だから小細工をしたんだ」
弟切が言った。
「でも、これはつまりチャンスだ。ハゼスが唯一見せた、付け入る隙だ」
弟切は続けた。
「チャンスは必ずものにする。行くぞ!」
草薙が言った。
*
EMPレーザーは電波塔のような建物の先端に設置されていた。そしてその周りを立入防止柵で囲まれている。
EMPレーザーで待機していたWOLFの隊員は交戦中だった。
「彼らは?」
弟切が聞いた。
――チームシークです。
奈々が答えた。
チームシークは敵のドローンを破壊しようとしており、それを敵数名が邪魔をしていた。そして敵のドローンは電波塔のセキュリティドローンと交戦中だったが、やはり特別仕様の敵のドローンが圧倒的で、セキュリティドローンがもうすぐで壊滅されそうな状態だった。
「私と草薙で先行する。荒木君は到着後に敵のドローンの対応。草薙、緊急モードで自動操縦に切り替え。ここからは走っていくよ!」
草薙は指示通り自動操縦に切り替えた。
そして二人はドアを開いて、道路に飛び出した。二人はアンドロイドなので身体強化は無いものの、腕力も脚力も並外れている。
道路に飛び出した二人は、時速100キロ以上出ている車よりも速く走り、すぐに目的の場所付近まで到達した。
二人は光学迷彩をオンにし、草薙はそのまま敵の懐まで潜り込んだ。
――シーク、こちらアルカ。範囲攻撃を行う。今すぐ退け!
弟切が言うと、チームシークは反射的に飛び退いて後退した。彼らも精鋭部隊なので、回避しろと言われたら即座に回避する。
「クリムゾン・デッド・サガ」
味方が後退したことを確認した草薙が、魔法名を言った。すると右手のひらが炎に包まれる。草薙はそれを思い切り地面に叩きつけた。
まるで爆破が起きたような激しい破裂音が轟く。そして叩きつけた場所を中心に、超高温の炎が勢いよく全方位に広がっていった。チームシークと交戦していた敵全員が咄嗟に魔法陣を展開するものの、あまりの威力に呆気なく突破されてしまい、そのまま焼かれてしまった。
爆風が収まった。辺り一帯、丸焦げになった敵たちが、ちりちりと残り火をあげながら無残に倒れていた。
「うわぁ、一撃だよ。流石草薙。範囲攻撃においては最強だね!」
と弟切。しかし草薙は気を緩めなかった。
「弟切、まだだ」
「わかってるよ」
二人は遠くに停車しているワゴン車を見つめた。
「弟切さん、草薙さん」
涼がようやく辿り着いた。
「荒木君。ここから先、命の保証はできない。覚悟しておくように」
と弟切。そしてワゴン車から敵が四人降りてきた。一人はハオ・ユーだった。
「希薄な愛によって育てられた者共。ごきげんよう」
一人はノウン。三校合同大会の時と同じ格好をしていた。
「久しぶりだな。弟切」
「あら、草薙もおる。懐かしいわぁ」
残り二人は、弟切と草薙がよく知る人物だった。
「おぉー、八意夫妻。久しぶりー!」
まるで友達と出会ったかのような感じで弟切が言った。
「八意夫妻!? 単衣のご両親ですか!?」
涼が驚いて言った。
「ああ、そうだよ。あの二人は元A部隊でね。単衣君を人質に取られて、引き抜かれたんだ。だから表向きは死亡扱いだった」
それを聞いた涼は、二人を見た。父の名は、
母の名は
「二人とも紹介するよ。こちら荒木涼君。単衣君の親友だ」
すると単衣の母、雅が大げさに反応した。
「単衣の親友! なあノウンさん。彼だけは殺さないでおきましょう?」
妙におっとりとしたテンポで雅は話した。イントネーションも不思議だ。
(京都弁か?)
涼はそう推測した。容姿の美しさも相まって、妙に神秘的である。
「弟切さん。あの二人は洗脳されているんですか」
涼にとってそれは重要なことだった。
「ああ、おそらくは」
弟切は言った。
「もう良いだろう」
ノウンは痺れを切らしたようだった。
「始めるぞ」
ノウンが言うと、ハオと、雅、前司がそれぞれ構えた。
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