第24話 疾風迅雷のクラーク
「いやいや、こんなことで3人もいらないし、こんなの俺様だけで十分しょっ、マッシュ、キリクわりぃーけど遊ばせてもらうから、ラークをたのまー」
クラークのその言葉に、この場の空気が凍ったが、次の瞬間に辺りは怒気に包まれた。
「なめているのか!いくら疾風迅雷のクラークと言われていても、俺ら相手に勝てると思っているのか!」
マリガの横にいた顔に大きな傷のある獅子の獣人が怒鳴った。
「うーん、オーガ20体相手なら少しは考えたけどなぁ、ただが人間と獣人ごとき、俺様の相手では稽古にもならないしなあ、そうだな、はい、死にたくないやついたら手を上げて………あれ?誰もいないか!残念だね、手間が省けたのに」
クラークはふざけるように手を上げている。それにより一層の殺気強くなった。
「オーガ20体だと、それがお前と同等と言いたいのか!」
「ふざけるな!」
「ぶっ殺す」
そこにいる男たちは怒り狂っていた。
オーガと言えば、
するとマッシュが、俺とキリクに間に静かに近寄ってきた。そして俺の耳元に顔を近づき。
「クラークが相手しているうちに探すぞ一緒にこい、ラークは絶対にキリクから離れるなよ」
俺にしか聞こえないような声で囁いた。
えっ本当にクラークが一人にするのか!マッシュは手伝わないのか!
俺が心配そうに見つめると。
「安心しろ、お前の親父は俺が認めた男だぞ、まあ危なくなったら加勢でもするさ」
俺の頭を撫でると微笑んだ。
「さて、死にたがり屋の諸君、準備はできたか?いつでもかかってこい!稽古でないから何人でも同時でいいぞ……冒険者のくせに魔物退治から逃げた臆病者たちには、ここは死ぬのにふさわしい場所だろう」
クラークはおどけるように言った。
「てめー」
獅子の獣人はクラークに近寄り、自分の身長ぐらいある大剣振りかざして、それをクラークに振り下ろした。
ドカーン
大剣が地面にぶつかる激しい音がした。
クラークがいた場所の地面がへこみ、石が飛んできた。
「ぷっなにそれっ?!うちのラークのほうが、よっぽどまともな攻撃するぞ、君は冒険者やめて正解だよ」
いつのまにか、獣人の背後にいたクラークが笑っている。
獣人はそのまま振り向きざまに大剣を横に振り切る。
完全にクラークを斬ったと思うタイミングなのに、そこにはクラークはいない。
「つまらんなあ、本当に全員が同時に連携してこないと無理だぞ、魔法が使いたければ外でしてもいいよー」
マリガの前に立っていてまるでビシッ!と決めるような恰好でクラークは語る。
ここには精霊が全くいない。きっと魔法封じの呪紋で、魔法に必要な精霊を消し去っている。
でも魔法を使われたら、魔法の使えないクラークが、完全に不利になるのにいいのか!
「流石、疾風迅雷のクラークですね、でも昔に比べたらかなり動きが遅くなっていますよ。田舎暮らしで体が鈍っているのか?それともやっぱり年ですね」
マリガがまるで見切ったかのような口調で言ってくる。
「いやね、うちの可愛い子の作る飯が美味いから、ついつい喰っちゃうし太るよな。その上いつの間にか魔物狩りもしないでだらだらとマルトの中だけで暮らしている怠けて動いてないし鈍るよねーまあそれはそれで幸せで嬉しいのだけど……」
クラークがデレるように頭を掻いている。
「おらっ」
獅子の獣人が巨大な大剣をまるで木刀を振り回すような動きで、クラークを斬り続けるがクラークをすべて紙一重でよける。
「うーん君はだめだ、全然なってない。9歳になったばかりのラークの足元にも及ばん。そろそろ飽きたし逝っとくか」
クラークは自分の腰の剣に手をかけたと思うと同時に。
「えっ」
誰かが驚きの声を上げた。
あり得ない状況になったせいだ。……それは獅子の獣人の首が飛んだからだ。
獣人の身体の動きは止まらず大剣を振り回し続けている。やがて手から大剣がすっぽ抜けて天井に突き刺さる。腕の動きが止まらずそのまま後ろ向きに倒れてしまう。
首がないのに血まみれになりながら、地面の上でバタバタと暴れる姿ははっきりと言ってホラーだ。
「マリガはなんか勘違いしているけど、俺が金級ではないのは冒険者1000人抜きが嫌だったからだぞ……うっかりと手を抜けなくて知り合いを殺したら目覚めが悪いからな」
クラークが俺らにだけに見えるように、手で合図を送ってた。
「行くぞ」
マッシュが気配を消して奥に走っていく。
俺たちもマッシュの後をついていく。
もちろん今までに習った気配を消す技を使いながら、そしていざって時のために
「さて、久しぶりに本気を見せますか!お前ら残念だがもう遅いぞ。命乞いの受付の時間は完全に締め切ったぞ」
クラークは口を端に大きくつり上げて笑う。
それは肉食動物が、これから行う狩りを楽しむような顔をしていた……。
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