第十五話 悪夢からの目覚め、そして悪夢
ぽたり。
ぽたり。
(あ……?)
少年は、目覚めた。
(やっぱり……夢だったんですね……)
夢の中身は――よく思い出せない。
(でも、嫌な……嫌な夢……)
少しまだ、寝惚けているのかもしれない。
まだ、太陽は窓の外にはなかった。冷たく、全てを凍りつかせるかのような白光が静寂の闇を切り裂いて時の止まったような室内を照らしている。
白と黒の世界。
いや……赤も、ある。
「……目が覚めたのね、レイ?」
誰……だっけ?
ヴィーだ。
僕たちの可愛いヴィー。
大好きな僕たちの可愛い――。
(……え?)
陽の光を受けてキラキラと輝いていた筈の少女の金色の長い髪は、少年の目には白く映った。
(月の光のせい……?)
モノクロの世界の中で少女は優しく微笑みかける。
「良かった……レイだけは助けられた」
「助ける?」
「ええ」
ヴァイオレットは頷いたが、それ以上言葉には出さず、膝の上に載せた少年の頭に触れると、銀灰色の長い髪を愛おし気に細い指で何度も梳った。
ぽたり。
ぽたり。
「あの音は何?」
「……何でもないのよ」
ぽたり。
「ほら、聴こえたでしょう?」
「いいの。もう……終わったことなのだから」
(終わっ……た……?)
少年はヴァイオレットの手を絡め取り、縋りつくようにして身体を起こした。と、違和感を覚える。妙に力が入らない。なのに、いやに軽い。
ぽたり。
「やっぱり聴こえますよ! これは何処から――」
心のざわめきに底知れぬ不安を感じて立ち上がろうとしたが足がもつれる。苛立ちが募り見下ろすと、衣服がほとんど脱げかかっている。というより、サイズがまるで合っていない。しかし、それは確かに少年自身の物に違いなかった。
「――!?」
ヴァイオレットの目の前だということを思い出し、慌てて両手で掻き寄せる。しかし、少女はそれを気にする素振りを一切見せなかった。
ただ、外の月を見ていた。
「ごめんね、レイ……。一緒に……行けなくなっちゃったね……あたしたち……」
「それは……一体……?」
――あたしたち。
「ロ――ロッジ! ロッジは何処に……!?」
少年は親友の姿を探した。
部屋の中には――いない。
窓の外には――いない。
ぽたり。
再び響く粘着質の水音に、反射的に上を見上げたそこに。
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