第五話 朗報――魔法実験大成功!
それは、雲一つない澄み渡った青空がどこまでもどこまで、果てしなく続く、そんな日のことだった。
「ねぇ? まさか今日も、レイに約束のこと伝え忘れてた、何て言わないわよね、ロッジ?」
「ま、まさか……ちゃんと言っておいたぜ?」
(やべ……先に予防線を張られちまったぞ!)
その肝心のレイナードは、三人が決まって集合場所に選ぶ村で一番背の高いポールパインの木の下にまだ姿を見せていない。
(ううう……どうやって誤魔化すか)
はなから来るなどとは信じていないロザーリオが、そわそわと足踏みを繰り返しつつ、必死にない知恵を絞っていた矢先、
「ロッジ、ヴィー! 良かった! ここにいた!」
「うわわわっ!」
唐突に背後からかけられた一声で心底仰天し、すぐにも喰ってかかった。
「いやいやいや! 何言ってんだよ、お前は! 良かったここにいた!じゃねえ――!」
ぎゅっ!
ぎゅっ!
耳を貸そうともせず、レイナードは右手でロザーリオの、左手でヴァイオレットの腕をきつく掴んでもう一度柄にもなく大声を張り上げた。
「来て! 今すぐ! 二人にも見せたいんです!」
「ちょ――うわわわわわ!」
「ひひひ引っ張んないでって――いやあああ!」
そのまま強引に、彼の研究所兼自宅まで連れていかれる二人。当のレイナードは何も聴こえていないどころか、始終ぶつぶつと何事かを繰り返し呟いているようである。足がもつれようが
ここ数日、風呂にも入っていないのだろう。野性の獣のそれに似たすえた臭いが、つん、と鼻先を
(おいおいおい……)
さすがにロザーリオも青くなった。
(遂におかしくなっちまったんじゃあ……)
唯一の頼みの綱と信じていたものの、思うような成果が得られず、苦悩に苦悩を重ねていたことはロザーリオだって知っていたし、済まないと思う気持ちもある。
だが、ここまでとは――。
「やっと成功したんです! 実験に! 魔法に!」
「ホ、ホントか!? レイ!!」
「ええ」
えへへ、と照れ臭そうに笑うその顔は、ようやっとそれがいつものレイナードなのだ、と確信できるものだった。
「これで、ヴ――いろんな病に苦しめられている人人を救うことができると思うんです! ただ、それだけじゃなくって……そのう……」
思わず口から飛び出しそうになった名にひやりとさせられたロザーリオの表情が、別の意味で曇る。
「それだけじゃ……ない? おいおいおい、そいつは一体――」
「だ・か・ら! 二人にも見て欲しいんですよ!」
もどかしそうに掴む二本の腕を上下に振り、結局ロクに説明もしないままにレイナードは二人を導いていく。
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