第2話 裏返し

「コーヒー、んでいきますか?」


 いつもの喫茶店の店先で紫瞳しとうの給仕に声をかけられた。

 私は、今しがた出たばかりの入口の扉を眺めていたらしい。

 夕日が扉を照らしている。

 給仕が入っていった店内は……見覚えのあるいつもの店内だった。私の飲み終えたはずのカップが無い。気のせいだろうか。

 そんな私に、いつもの無表情で声をかけてくる給仕マスター。顏に『何やってんの? 入らないの?』という疑問を貼りつけ、こちらを見るのはやめてほしい。

 少し顏を背けつつ、ちょうど小腹も空いてきたので作ってもらう。


「今日は、どうします?」

「軽いもので頼む。」

「……よろしいのですね?」

「どういう意味だ。」

「いえ、レシートです。」


 テーブルの端にレシートを置き、給仕は一礼をして時間をかけカウンター内に戻っていった。いつもの給仕、カウンター内の額縁、そして

 お題は暇つぶしだ。どうぞ、と給仕が提案したことだが。2日ほど考えても分からん。


 コーヒーを一口飲み、カップを置いた。

 私のため息と、給仕がポッドを置く音しか聞こえない。落ち着いた雰囲気の穴場。


 側のレシートを見る。1杯目なのにレシートを置いて行った。

 給仕の『レシートを置いて行くタイミング』は日によって違う。


「……確か昨日は2杯目だったか。」

「いいえ。」

「……こういう事には反応するんだな。」

「はい。お代は10枚です。どうなさいます?」

「その独特な言い回しは何なんだ。」

「……あなた様は既にかえられています。」


 理解した。ご丁寧にも入口のカギを締め、暗に目で『進め』と。はいはい。

 額の前に立ち、ふと考える。


「そう言えば……お題がまだだったな。」


 んだあおい瞳が私を見据みすえていた。



――――――――――

 あとがき


 そして1話目に戻る、そんな話。

 『違和感』が伝わるだろうか。

 登場人物の描写を、ほぼカットすることで額やコーヒー、そして『お題に』焦点を向けられたら……という散文。


 まだまだ練らないとなぁ。

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ひと時。 あるまたく @arumataku

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