11話 最高指揮官の確認
「作戦第一段階が終了しました」
清住統合幕僚長が告げた言葉を聞いて、高嶋は大きく頷いた。もう引き返せない所まで来てしまった。
アメリカの経済制裁措置が強化され、海上封鎖が開始されるが、北朝鮮は対話による交渉ではなく、潜水艦などを出港させるなど、対抗する動きを見せた。アメリカはこの動きに対し、制限的軍事行動として核関連施設や弾道ミサイル施設を破壊する予防空爆を実施すると通告してきた。
それに伴い日米共同作戦部隊の展開を開始しており、すでに米
特殊作戦群や第一空挺団などの空路潜入部隊は、空自の作戦情報隊が定期的に実施している情報収集機のコースを飛んで欺瞞したKC-767空中給油輸送機を使用して北朝鮮の領空外から自由降下傘によって空挺降下し、
また空挺降下出来ない地域に潜入する部隊は、潜水艦から発進。海自の特殊部隊を中心とする部隊が潜水で潜入している。
「現在、各部隊はそれぞれの担当する作戦地域へ隠密に前進中です。北朝鮮の警戒部隊を迂回するために一部行程に遅れが出ている部隊もありますが、問題はありません。潜伏予定地点に到着後、監視と偵察を行い、弾道ミサイルの捜索、拉致被害者奪還の作戦準備を行い、作戦第三段階発起まで潜伏、待機します」
「問題はゼロアワーだな。第三段階の発起時期に目標に到達できていなければどうなる?」
米軍の攻撃は潜入した各特殊部隊が目標を捕捉し、態勢を整えれば開始される見込みだ。
「そのまま潜入を続け、担当の捜索区域で捜索を実施させます」
「拉致被害者の救出はどうするんだ。戦争の混乱が始まれば、任務達成は困難になるぞ」
「拉致被害者奪還部隊は、作戦発起と同時にヘリ搭載護衛艦より投入されるヘリコプター部隊が主力です。ヘリコプター部隊の突入を支援するのが、事前潜入部隊です。どちらも特殊作戦群が実行します。またそれとは別にヘリ護衛艦に即応部隊として、不測事態対処部隊を待機させています。潜入した部隊が間に合わない場合、この不測事態対処部隊が奪還部隊を支援することで補う計画です」
不測事態対処部隊には陸自の戦闘ヘリコプターも配備されている。陸自は在外邦人等保護のために輸送ヘリを総動員しており、半島における作戦機を確保するために海自のヘリも使用する予定だ。陸海空のヘリコプター部隊はフル稼働しており、特に作戦に投入されるヘリ部隊は護衛艦からの離着艦訓練や特殊作戦に備えた地形追随飛行訓練などを行っている。
「分かりました」
高嶋はそう言って各部隊の現在の状況が時系列で表示されたスクリーンを見ていた。戦争を経験したことのない、自衛官達が北朝鮮国内に潜入している。訓練も装備も万全を期していたが、戦争は予測不能だ。彼らを死地に送ったのではないかという不安が、高嶋の胃を締め上げていた。
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