第33話

僕は休みの間は自分の部屋とリビングしか行き来しなかった、外へ出ることなく

親と話す機会も次第に減り、今はもう親からは「ご飯出来た」だけの一言だった


「計都、夕飯用意したよ」


母親が部屋のドアの前で言った


「うん」


僕は返事をして部屋を出て母親と一緒にリビングに向かった


そして僕の前には父親とその隣には母親、向き合う形で食事をした


僕が学校に行かなくなってはじめの頃は怒られた、しかし今では全く何も言わずに食事の場では無言の空気のまま食べていた

しかし、初めて母親が僕に話しかけてきた


「計都、今日は修也君てゆう子が来たわよ」


「修也先輩が?」


僕と母親が久々に会話した


「うん、用は何も言わなかったけどまた明日来るらしいよ、どうするの?」


「考えさせて」


僕はそう言ってご飯を残して部屋に戻った


「先輩に合わせる顔がないなぁ、どうしよう」


僕は部屋のベッドで横になり考えた

僕は春華ちゃんの前から逃げた、いや助けることを諦めたのかもしれない

修也先輩に言った「付き合い続ける」と言ったはずなのに、、


「はぁ、、」


僕は重く深いため息をついた


次の日、学校が終わる時間に家の玄関のチャイムが鳴った

母親が返事をして、ドアを開けた

少し経つと母親から呼び声が聞こえた


「計都ー、修也くん来たよ、どうするのー?」


僕は部屋のベッドでうずくまっていた


「僕はもうどうすることも出来ない」


すると母親が慌てた声が聞こえた

どうしたのだろうと僕はベッドから起き上がり部屋を出ようとドアノブに手をかけようとした瞬間にドアが開いた


「うわっ!」


僕はビックリしてその場に尻もちをついた


「計都、悪いが話をしよう」


ドアを開けて立っていたのは修也先輩だった


「先輩!!」


母親は修也先輩のうしろでオドオドしていた


「計都のお母さんすみませんいきなり、けど計都を学校に行かせたいので少しお話をしてもよろしいですか?」


修也先輩は母親にそう言うと


「え?あ、はい、すみませんお願いします」


母親は一礼して下に降りていった

修也先輩は母親が下に降りていくのを確認すると部屋のドアを閉めてその場に座り込み腕を組んだ

僕は尻もちをついた状態からすぐに正座をした


「計都、話をする前に一つ聞きたい」


修也先輩の声は少し怒りっぽかった


「な、なんでしょうか」


僕は聞いた


「お前は俺になんと言った?」


「えっと〜、春華ちゃんと付き合い続ける、ですか?」


僕は目を泳がせながら言った


「ふむ、そう言ったな、で今の状況は?」


「僕は今は学校休んでいて、春華ちゃんも休み?」


「だそうだな、ならそれは付き合ってると言っていいものなのか?」


「い、言えないのかなぁ?」


「そこら辺は事情を知ってる人からすればそうなるな、ならお前はこの期間に何をした?」


「何もしてないです」


「分かった、なら聞こう」


「何をですか?」


「もう一度聞く、お前はアイツと付き合い続けるのか?」


「ぼ、僕は」


僕は次の言葉が決まってるはずなのに出なかった、迷いがあった、本当に付き合い続けることができるのか?いや付き合うことができるのか?と


「躊躇、いやお前は迷ってるんだな」


修也先輩には図星だったらしく、先輩は立ち上がり僕の目の前に立った、すると胸ぐらを掴み僕を立たせた


「いつまでそうしてるつもりだ!迷うな!決めたはずだろ、お前は俺に言ったよな、付き合い続けるって!まだ付き合って日が浅いかもしれねぇ、けどお前はアイツの過去を知った、なら助けるべきじゃないか?俺は無理だった、確かにあの時に止めていれば変わったかもしれない!」


先輩は僕の胸ぐらを掴みながら怒鳴り声で言った

その目には涙を流していた


「俺はアイツ、春華の事が好きだった、けど俺は近づけなかった、俺はその時は臆病で独り身だった、だから近づく勇気は無かった!けどお前は違った、お前は勇気を持って春華に告白した、そして過去を知った、ならお前は彼氏としてするべき事は決まってるだろ!」


先輩の涙の理由がわかった、修也先輩は春華ちゃんの事が好きだった、しかし先輩は先輩であったためと自分で言った臆病で独り身だったため近づくことすら出来なかった、そのためストーカー行為に走っていたがある日、あの事件を目撃した、しかし止められなかった、その事を悔やんでいた、だからあの時に僕が付き合い続けると言った時に見せたあの笑顔は僕に任せたことだったのだろう、と


「もう一度聞く!お前はどうしたい?」


「僕は」


僕が出すべき答えは決まった


「僕は春華ちゃんと付き合い続けて、春華ちゃんを助けたいです!」


「それを待っていた、いや待たされた」


修也先輩は僕を離して涙を拭いた


「先輩、必ず僕が変えてみせます」


「ああ、よろしく頼む、計都にしか出来ない」


修也先輩は僕の頭に手を置いて撫でた


「ちょっ、先輩」


僕は先輩の手をどけようとしたら、先輩は手を離した


「なら、今度こそよろしくな」


先輩は部屋のドアを開けた


「はい!」


僕は元気よく返事をした、それを聞いた先輩は部屋から出ていった


下から母親と修也先輩の声が聞こえて玄関を出る音が聞こえ先輩は帰って行った


僕のやる事は決まった、決まっていた

それは春華ちゃんと付き合い始めてから密かに決まっていた運命なのかもしれない、ならやるしかない

僕はそう決意して明日からまた学校に通い出した

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