第27話

文化祭二日目 日曜日


今日は文化祭最終日

春華ちゃんと一緒に回る約束をしていた僕はワクワクしながら早めに学校に着いた

そこには既に山田がいた


「山田、おはよう」


「計都か、おはよう」


山田は陽気な声だったがどこか落ち着きがない様子だった


「どうした?そんなソワソワして、あ、もしかして臼井さんの事か?」


「はぁ、ち、違うしそんな訳ないじゃん」


山田はそう言っていたがかなり動揺していたため図星だった


「動揺してるぞ」


「うっ、、」


「とりあえず頑張れと言い様がないが応援してるよ」


「お前は彼女持ちだから気楽でいいな」


「はは、まぁね」


僕は彼女持ちでも色々と訳あり彼女みたいなものだから、と言おうとしたがやめた


「再確認だけど計都は今日は春華ちゃんと回るんだろ」


「そうだけど、どうした?」


「いや、別に」


山田は何か言おうとしたが言わなかった、そしてそのあと少し話していたらクラスのみんなが登校してきた


「おはよう、春華ちゃん」


「おはよう、早いね計都君」


「うん、まぁね」


クラスの人達が完全に集まり教室内を少し手直しして文化祭二日目が始まった

僕は春華ちゃんと一緒に回り始めた、ちょうど山田も臼井さんと回り始めた


「とりあえずどこから回る?」


僕は春華ちゃんに聞いた


「計都君に任せるよ」


春華ちゃんは笑って答えた


「ん〜、そう言われると迷うな〜」


僕は文化祭のパンフレットを見て春華ちゃんに気を配りながら回った


「あ、計都君見て」


回っていると春華ちゃんが僕の肩を叩いて指を指していた、僕は春華ちゃんが指を指している方向を見た

そこには僕達のクラスと同じ喫茶店をやっている3年生のクラスがあった


「普通の喫茶店かぁ、僕達はお化け喫茶店だからちょっと少し気になるなぁ」


「入ってみる?」


「うん」


僕と春華ちゃんはそのクラスの喫茶店に入った

すると


「いらっしゃいませ〜」


メイド服を着た女子生徒が僕達が教室に入った瞬間に元気な声が響いた


「お二人ですか?あら?カップルさん?」


女子生徒は僕達に近づいて聞いてきた


「あ、はいまぁそうです」


「へぇ〜、んじゃカップルさんご案内で〜す」


女子生徒は高々と声を上げながら僕達を席に案内した

案内されたのは窓際の席で校庭が見える席だった


「それでは少々お待ちを〜」


女子生徒はそのまま後ろ側に設置してあったカーテンで仕切られたスペースに入っていった


「凄いなぁさすが3年生」


僕はさっきの女子生徒のメイド服を見て関心の声が出た


「ふ〜ん、計都君あーゆーのが好きなの?」


春華ちゃんが肘を机について手に顔を置いて僕の方をジト目で見てきた


「え?いやいや、僕はただ服装の完成度が高いな、と思っただけだよ」


「変態」


「え?なんて言ったの?」


春華ちゃんはボソッと言った、僕はハッキリと聞こえなかったためもう一度聞こうとしたら


「おまたせしました」


男の人の声が聴こえて僕達の机の前に置かれたのは少し大きめのイチゴのショートケーキ2つだった


「カップル向けに少し大きめの特別です」


聞き覚えのある男の人の声だった


「ん?」


僕は男の人の方を見るとそこには


「よぉ、久しぶり」


修也先輩だった

修也先輩は執事服を着ていた


「せ、先輩!?」


僕は驚き席から立った


「知り合い?」


春華ちゃんが聞いてきた


「え?」


予想外な一言だった


「意外だ、ちょっと計都こっちにこい」


修也先輩は驚いていて僕を呼び一度教室を出た


「先輩これって、、」


「ああ、どうやら俺を覚えてないらしい」


「そうですよね」


「ちょうどいい、これは好都合だ」


「なんでですか?」


「これなら今度から普通にお前に近づけるからだ」


「なるほど」


「そうゆう訳だ、よし戻るぞ」


修也先輩との会話は1分たらずで終わり教室に入った


「おまたせ」


僕は席についた

修也先輩は後ろに戻って行った


「何の話をしてたの?」


春華ちゃんに聞かれて一瞬ドキッとしたが平常心を保って答えた


「昔の先輩だったから少し話をしてただけだよ」


「へぇ〜、その先輩の名前は?」


唐突に意外な事を聞かれた

春華ちゃんはポケットからメモ帳を取り出した


「ん?修也先輩だけど?」


「苗字は?」


「遠藤だけど、、」


春華ちゃんは淡々とメモ帳に何か書いていた


「はい、OK」


そして書き終わってメモ帳をポケットにしまった


「何を書いていたの?」


「ん〜、内緒」


僕は聞こうとしたが内緒と言われたのでそれ以上聞いてもしょうがないと思いショートケーキと一緒に運ばれてきたフォークを手に取ろうとしたら


「ダメ!」


春華ちゃんに取られた


「え?あれ?」


春華ちゃんは僕のフォークで春華ちゃん自身のケーキを少しカットして僕に近づけてきた


「はい、あーん」


まさかの行動だった


「ちょっと、春華ちゃん」


僕は止めようとしたが春華ちゃんは辞めなかった

僕は仕方なく口を開けた


「あー、ん」


僕は食べた

口の中で甘さが広がった、そして時々染み渡るイチゴの甘酸っぱさがあった

とても美味しかった


「美味しい」


「ふふ」


春華ちゃんは満足そうな顔をしていた


結局最後まで食べさせられた、別に嫌とゆうわけじゃなく少し恥ずかしかった、けど春華ちゃんの満足そうか顔を見ていたら止めようにも止められなかった

その後、修也先輩に少し挨拶してから教室を出た


「次はどこにいく?」


僕が聞くと春華ちゃんが


「あ、次はあれ行きたい」


と言い出して僕の事を引っ張って走り出した


僕はそのまま校庭に連れ出された

着いた場所は『くじ引き』と書かれた屋台だった


「くじ引き?」


「そう、ここは確か先生達がそれぞれペア組んでやってるらしいの、ここは確か2年生主任とその副主任がやってるらしいの」


春華ちゃんはどうやら僕達がさっき教室の外で話してる間に窓から次に行く場所を見つけていたようだ


「へぇー、先生達がそれぞれやってるなんて面白いね」


「でしょ、早くやろう」


春華ちゃんは目をキラキラさせながら言った

どうしてこんなにも目を輝かせているのか、と気になったらすぐに理由が分かった


「あれがほしいの?」


僕は指を指した

そこには先生の後ろに置いてあった大きなクマのヌイグルミだった、その横に『特賞』と書かれていた


「うん、ほしい!」


春華ちゃんは元気よく答えた

可愛い、と思いつつとりあえずやろうと思った、春華ちゃんのためにも


「よし、やってくる、まってて」


僕は列に並んだ

数分経つと自分の番が回ってきた


「いらっしゃい、君は何を狙ってるんだい?」


主任は男性で副主任は女性だった


「えっと、そのヌイグルミかな」


僕は少し恥ずかしながら言った


「おや?彼女にプレゼント?」


副主任が聞いてきた


「ええ、まぁ」


「ハッハッハ、そいつは頑張れよ」


そう言って主任が持っていた箱を僕の前に出した


「当たりますように」


僕はそう言って手を入れて迷わず紙を取った

そしてそれを恐る恐るめくった

そこには


『ハズレ』


ハズレだった


「ハズレかぁ〜」


「ハッハッハ、残念だったな、また暇だったら来いよ」


主任がそう言った、すると副主任が屋台の横で手招きしてるので僕は近づいた


「なんでしょうか?」


「ハズレだったのは残念だけどこれあげるわ」


そう言って副主任が僕に渡したものは2つの小さいクマのストラップだった


「あ、ありがとうございます」


「彼女さん、大事にするのよ」


副主任は屋台の仕事に戻った

僕はクマのヌイグルミは取れなくて残念だったけど副主任から貰ったストラップを握りしめて春華ちゃんのところに戻った


「ごめん、取れなかった」


「ダメだったかぁ、残念」


春華ちゃんは悲しそうな顔をした


「けど代わりにこれを貰ったよ」


僕はそう言って手のひらを開けてクマのストラップを見せた


「可愛い」


「2つあるから1つ渡すね」


「ありがとう、大切にする」


「良かった」


僕はその時に見せた春華ちゃんの表情は一生忘れないであろう可愛く綺麗で喜んでいた表情だった

その後も色々と回り歩いた、とても楽しく、嬉しかった


そして文化祭二日目も終わりに近づき一般の人達は帰り始め、各クラスの人達も片付けに入っていた


僕と春華ちゃんも教室に戻り片付けの手伝いをしていた


「あれ?そーいえば見当たらない」


僕は教室内を見渡したが見当たらなかった、山田と臼井さんが


「どこにいるんだ」


僕は教室から出て走り探し始めた

廊下

体育館

空き教室

どこを探しても見当たらなかった


「ん〜、どこだ〜、あ、1つだけ見てない場所があった」


そこは屋上だった、正確には屋上入る前の扉付近の踊り場だった

そこは少し広くなっており少し物が置かれていたが別段、行っては行けなくはない場所だった


「とりあえず、見てくるか」


そうして屋上の踊り場がある階段を登っていき、あと1階とゆうところで人の気配があった

僕はもしかしたら山田と臼井さんだろうと思い階段下から隠れて耳をすましていた


「山田くん、話はそれだけ?私戻らないと」


臼井さんの声だった


「えっと、あの〜、、」


山田が戸惑っていた

ちょうど告白するタイミングだったようだ


「他にあるの?」


臼井さんが少し痺れを切らし始めた


「よし、やるぞ」


「なにを?」


山田は告白する準備が出来たらしい


「えっと、臼井さん」


「はい?なんでしょう」


「少し前に臼井さんとお話した時に惚れました!付き合って下さい!!」


山田は言い切った、臼井さんの反応はどうなるかだった

静まり返った踊り場

臼井さんが出した答えは


「え、えっと〜、私なんかで良ければ、お、お願いします」


OKだった、山田の告白は成功だった


「よし、ありがとうございます」


山田は喜びの声を上げた


「とりあえず、戻りましょうか片付けもありますから」


臼井さんはそう言って階段を降り始めた

山田もあとに続き降り始めた


「やばっ」


僕は急いで教室に戻った

なんとか2人には気付かれずに済んだ


その後、教室に帰ってきた2人は堂々と付き合い始めたと宣言した

みんなからは意外な組み合わせ、と言われたが山田は付き合えた事が何よりも嬉しかったらしくそんなことは気にもとめなかった感じだった


こうして文化祭二日目が終わった

みんなが片付けが終わり帰り始めた

僕と山田は教室の端で話していた


「計都、ありがとうな」


「いや、俺は何もしてないよ」


「それでも感謝はしている」


「恥ずかしいからやめてくれ」


僕と山田は笑った、とても楽しい二日目間が過ごせた

僕は春華ちゃんと一緒に回れたことが何よりも嬉しく

山田は告白が成功したのが嬉しかったからだ


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


文化祭二日目が終わり、家に帰り部屋の電気を付けて机の上のパソコンの電源を入れた


「あの人、どこかで見たことある」


私はそう思いポケットからメモ帳を取り出した

そしてそこに書かれた文字を調べ始めた


『遠藤 修也』


片っ端から調べた、気になるから調べた、何か胸の奥で詰まるような感覚があったから調べた

たったそれだけの事を思いしらみ潰しに調べた


「見つからない」


私は調べたが見つからなかった


「まぁいい、あとで聞ける時に聞いてみよう」


私はそう呟いてパソコンを閉じた

そして部屋の電気を消して部屋から出た

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