第26話

文化祭当日 土曜日


教室内はみんな楽しく準備をしていた


クラス委員長の女子の臼井さんと男子の青木君が指示を出しながら順調に進んでいた

青木君はあまりパッとしない眼鏡男子だったが一度決めたことは貫き通すタイプだった、そのためみんなが委員長を押し付ける感じにしたらあっさりと承諾した


「ちょっと青木君、それまだ書き終わってない」


「大丈夫です、俺が終わらします」


臼井さんがクラスごとに書く生徒会に提出用の書類を書こうとしたが青木君がそれを取ってすぐさま書き始めた


「あら、また先にやらてるの」


臼井さんの友達が冷やかしたかのような感じで言った、臼井さんは頬をぷっくりと膨らませ青木君を睨んでいた


「まぁ、そこは青木君の優しさじゃない?」


臼井さんの友達はそう言ったが、青木君がすぐさま言った


「いえ、臼井さんはいつも仕事が遅いので俺がやったほうが早いので」


「うわ〜、辛辣〜」


「青木君、ひどいよぉ」


臼井さんは青木君にしがみついたが青木君は顔色ひとつも変えずに書類を書いていた


「またやってるよ」


2人の光景は毎度のことだった、僕はそれを見て山田の方を見た


「いつも通りだな」


山田は意外にも普通の反応だった


「あれ?山田はあの光景みて羨ましがるか嫉妬しないの?」


「なんで?」


山田はキョトンとした顔で僕の方を見た、今思えば山田はかなりのバカだった、全て気合いで乗り切ってきたのを忘れていた

これで告白ときた、本当に成功するか分からなくなってきた


「はぁ、まぁいいや、ところで山田は午前は空いてるだろ?」


「ああ、そりゃ一緒だからな」


「そしたら回りながら明日のことをしっかりと計画しよう」


「そうだな、ところで大丈夫なのか?」


「え?なにが?」


「いや、春華ちゃんと一緒に回らなくて」


「多分、大丈夫だと思うよ、明日回るから」


「なるほど、そうだったな」


僕はとりあえず春華ちゃんに今日は山田と回ると伝えた


「ごめん、今日は山田と回る」


「いいよ」


春華ちゃんは迷いなく答えた


「ありがとう!」


「そのかわり、明日は一緒に回ろうね」


春華ちゃんはニコッと笑った、その笑顔は天使のような笑顔だった


そうして教室内全ての準備が終わり、文化祭は本格的に始まり続々と一般人も来始めて校舎内や校庭は賑わい始めた、あるクラスはお化け屋敷、あるクラスは普通の喫茶店、あるクラスは校庭に屋台を開いていたりと色々なものがあった

僕は山田と教室を出て廊下を歩きつつ話し始めた


「凄いなぁ」


僕は廊下をすれ違う一般の人々や教室内で色々な出し物をやってるのを見て驚いていた


「本当だな、凄い人」


山田も同じように驚いていた


「とりあえず、話せる場所を探すか」


「そうだな」


僕は山田にそう言って見て回りつつ落ち着いて話せる場所を探した

しかし、文化祭もあってか落ち着いて話せる場所もなく結局午後になってしまい自分達のクラスに戻って午前中の当番だった人達と変わった


「もう交代かぁ〜」


「結局、話せなかったな」


「そうだな〜」


僕はとりあえず衣装に着替えることにして臼井さんから渡された衣装を持ち、教室内の端っこにある簡易更衣室で着替えた

男子は僕と山田以外に2人いた

僕の衣装は黒猫の衣装だった


「なぜこの衣装」


僕は黒猫の衣装を着て困り顔で言った


「あははは、似合ってるぜ計都」


山田は笑っていた、山田の衣装は黒いローブを着ただけだった


「そりゃどうも、しかし山田、お前それでいいのか?」


「別に、着れれば問題なし」


山田は胸を張りドヤ顔で言った


「はいはい、そうですか」


僕はもう山田に何言っても意味がないと思った

ほかの男子は白衣に血糊を付けた衣装とゾンビ風な衣装だった

僕達が着替え終わり更衣室を出るとちょうど女子達3人とすれ違った

その時に春華ちゃんもいた


「計都君、その衣装可愛いね」


春華ちゃんは満足そうな笑顔で言ってきた


「あ、ありがとう」


春華ちゃんに言われるとなんか恥ずかしかった


「さて男子はさっそく午後の準備に取り掛かって」


臼井さんは僕達に指示を出した


「あれ?そーいえば臼井さんは着替えないの?」


僕は臼井さんがまだ制服のままだったことに気づき聞いた


「あー、いやー、私はいいかなぁ〜、なんて」


臼井さんは明後日の方向を見て話を逸らそうとしていた


「なんで?」


「なんでって、そりゃあ〜」


臼井さんは必死に言い訳を考えているようだが全く出てこなく挙句


「分かった、今更だけど着てくるよ」


臼井さんはそう言って衣装を掴み更衣室に入っていった


「そんなに着たくなかったのかな?」


「さぁね、とりあえず準備するか」


僕達男子4人は準備を始めた


準備が終わる頃に女子達が着替えおわり更衣室から出てきた

ナースの衣装に血糊をつけたものや、この学校とは違う制服に血糊をつけた衣装だった


春華ちゃんは魔女の衣装だった


「ん?」


僕はあることに気づいた


「ちょっと僕と春華ちゃんだけおかしくない?」


そう考えてみたら黒猫に魔女ときた、これは完全に合わせたとゆうより、もといホラーから少し離れたハロウィンに近かった


「よく気づいたね、その猫の衣装は私が作ったの」


春華ちゃんが僕に近づきながら答えた


「これで私達だけのペアなの」


春華ちゃんはそう言って僕に抱きついてきた


「本当に熱々だな〜」


山田は呆れたように言った

今更だが僕と春華ちゃんは付き合い始めてからみんなに注目を浴びてその時はクラスみんながあまりいい雰囲気ではなかったが日を重ねるごとに僕と春華ちゃんの付き合いはもはや誰にも手出しが出来ないぐらい仲が良いように見られて今では冷やかしまじりで祝福されている


「もう本当はダメと言ったのですが春華さんがどうしてもと言われたので仕方なく了承しました」


そう説明して臼井さんが更衣室から出てきた


「臼井さん、その衣装、、」


臼井さんの衣装は囚人服の衣装だった


「とてもお似合いです」


僕は笑いを堪えつつ言った、ほかの人達も笑いを堪えていた


「だから嫌だったのよ」


臼井さんは顔が引きつった、しかしひとりだけ反応は違った


「臼井さん、その衣装可愛いね、似合ってる」


山田だった、山田は臼井さんに近づいて頭に手を置いた


「あ、ありがとう」


僕はその光景を見て、これはいけるかと思った


「えっと、、名前なんでしたっけ?」


臼井さんは山田の名前を覚えてなかったのだ


「ははは、覚えてもらうのも大変だな」


山田は苦笑いしながら自分の名前を伝えた


そして午後はみんな楽しく、一般の方達にも楽しんで頂いて文化祭の一日目が終了した


「お疲れ様〜、おつかれ〜、、、」


臼井さんはクラスの人達が帰っていくのを見送っていた


「山田、チャンスだ」


僕は山田に言った


「お、おう、行ってくる」


山田は緊張しながら臼井さんの前に行った

僕はその光景を教室の端から見ていた


「どうしたの?」


すると春華ちゃんが僕のところに来た


「あ、いや山田が明日臼井さんと回りたいらしくそれを誘うらしいんだ」


「へぇ〜」


春華ちゃんは興味なさそうな顔していた


そして山田は臼井さんの前に立った


「えっと、臼井さん」


「ん?あなたは確か〜、山田くん?だっけ?」


「はい、そうです」


「山田くんどうしたの帰らないの?」


「帰る前にお願い事がありまして〜」


「ん?なぁに?」


山田はモジモジしつつ、覚悟を決めたように背筋を伸ばして言った


「明日一緒にまわりませんか」


山田は言い切った

一瞬の静寂

臼井さんの答えたは


「えっと私でよければいいよ」


答えはOKだった


「よっしゃ、んじゃまた明日、臼井さん」


山田はそのままダッシュして帰宅した


「成功して良かった〜、さて帰ろうか春華ちゃん」


「うん、そうだね」


春華ちゃんは終始見ていてずっと興味のない顔していた


そのあと、臼井さんに見送られて僕と春華ちゃんは帰った

明日は臼井さんと山田がどうなるのかも楽しみなのと春華ちゃんと回れることも楽しみで夜は眠れずにいたが考えてるうちに眠りについていた

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