「20*出雲国と紀伊国の熊野」の神社

神魂伊能知奴志神社

島根県出雲市/式内小社

出雲大社の境外摂社。命主社といい、カミムスヒ(神魂命/神産巣日神)を祀る。後方に巨岩があり、祭祀場と考えられる。古代の銅剣や銅矛、勾玉などが見つかった。カミムスヒは出雲大社に祀られてるが、出雲大社の祭神は出雲国造家の出雲氏が祀った記紀神話の別天津神・神産巣日神。当社の祭神は出雲国風土記に書かれる出雲神の祖神・神魂命。


熊野大社/熊野(いや)神社

島根県松江市/名神大社/出雲国一宮/旧国幣大社

火の発祥の神社として日本火出初之社といわれる。熊野坐神社といわれ、紀伊国(和歌山県)の熊野本宮大社の元社といわれる。和歌山県御坊市熊野(いや)にある熊野(いや)神社は、伊弉諾神と伊弉册神、大日靈女神を祀る。社伝で、出雲国から紀伊国へと分祀の道中に当地に熊野神を留めると伝える。

祭神は熊野大神櫛御気野命。出雲国風土記で、伊佐奈枳乃麻奈子坐熊野加武呂乃命。先代旧事本紀、神代本紀で、出雲国熊野に坐す建速素盞嗚尊とあり、櫛御気野命と素戔嗚尊は同神といわれる。出雲国造神賀詞で、伊邪那伎日真名子加夫呂伎熊野大神櫛御気野命。しかし本来の祭神は、紀伊国の熊野本宮大社の祭神・家都美御子大神と同じ地主神、意宇川と意宇平野の土地神、御饌神(食物神)と考えられる。

出雲国造神賀詞で、熊野大神の神格は所造天下大神(オオクニヌシ)の上位とある。摂社に、伊邪那美神社がある。


須佐神社

島根県出雲市/式内小社/旧国幣小社

出雲国風土記の須佐社といい、須佐之男命を祀り、須佐之男命を祀る神社の総本社。櫛名田比売の親神・足名椎命と手名椎命の後裔・稲田氏(のちの須佐氏)が神職を務める。

大宮氷川神社のアラハバキ神を祀る門客人神社に、なぜか足名椎命と手名椎命が祀られるが、当社と関係は不明。


須佐神社

和歌山県有田市/式内名神大社/旧県社

素盞嗚尊を祀る。社伝で、大和国吉野郡西川峰(奈良県吉野郡吉野山)より分祀と伝える。海人族、または海人族をまとめる紀伊国造家の紀氏が祀ったと考えられる。

出雲国から紀伊国へと素盞嗚尊を祀る出雲族が移ったという説と、出雲国風土記に、あまり描かれてない素盞嗚尊の原郷は紀伊国という説がある。神紋は、出雲市の須佐神社の亀甲に柏紋でなく、桃紋。


熊野本宮大社

和歌山県田辺市/式内名神大社/旧官幣大社

家都美御子大神を祀る。熊野坐神社といい、祭神も熊野坐大神といわれた。元社地は熊野川の中州、大斎原。家都美御子大神はスサノヲ、またはイザナミ、スサノヲの子神・イソタケルという説もある。本来の神名が熊野坐大神のため、地主神と考えられる。原・熊野信仰は日神信仰で、八咫烏を神使とするため、日神。元社地が熊野川の中洲にあったため、水神、熊野川の神。ほかに森(木)の神という説もある。また、元社地と神名を考えると、御饌神(食物神)。ニギハヤヒを祖神とする物部氏の支族、熊野国造家の和田氏が神職を務めた。熊野三山は、護符の熊野牛王符(牛王宝印)とともに、熊野信仰の聖地として皇族、貴族を含め、全国に広がった。東北、関東地方に多い。また、沖縄県はほとんどの神社で熊野権現を祀る。


加多神社

島根県雲南市/式内小社/旧郷社

出雲国風土記の加多社といい、少彦名命を祀る。遺跡上に建つ。


淡嶋神社

和歌山県和歌山市/式内小社・論社/旧郷社

加太淡嶋神社、加太神社といわれ、式内社・加太神社の論社のひとつ。淡島神社(淡嶋神社)・粟島神社・淡路神社の総本社。少彦名命、大己貴命、息長足姫命(神功皇后)を祀る。総じて淡島神と称するが、淡島神は諸説があり、少彦名命が国造りを終え、粟島を経て常世へ帰った説、イザナギとイザナミの国生みで生まれた淡島の説など。針祭、雛流しで有名。


粟島神社

鳥取県米子市/旧郷社

伯耆国風土記で、祭神の少彦名命が、当地で粟を蒔き、実って弾けた粟の穂に乗って常世へ帰ったため、粟島と伝える。伝承で、少彦名命が海へ落ち、空豆の皮の船で伯耆の島(粟島)に着いたと伝える。つまり当地は少彦名命の最初と最後の地となる。


素盞嗚神社

広島県福山市/式内小社/備後国一宮/旧県社

素盞嗚尊を祀る。備後国風土記の疫隈國社の比定社。または境内摂社の蘇民・疱瘡神社が疫隈國社の比定社といわれる。疫隈國社の社伝の蘇民将来の伝承で、武塔神は素盞嗚尊を名のり、武塔神は牛頭天王と同神といわれる。蘇民将来や武塔神の出自は不明。


廣峯神社(広峯神社/広峰神社)

兵庫県姫路市/旧県社

牛頭天王の総本宮というが、八坂神社も牛頭天王の総本宮という。

素戔嗚尊、五十猛命を祀る。神仏分離前は天王山増福寺、または広嶺山増福寺と称し、牛頭天王、本地仏の薬師如来を祀る。牛頭天王は神仏習合の神。祇園信仰の神、御霊信仰の疫病神。武塔神と同神。また、陰陽道で天道神と同神。また、岐の神、塞の神の熊野大神と同神となる。


須我神社

島根県雲南市/旧県社

出雲国風土記の須我社。須佐之男命、妻神の稲田比売命(櫛名田比売)、子神の清之湯山主三名狭漏彦八島野命を祀る。本来の祭神は不明。後方の八雲山に、夫婦岩という巨石と小祠がある。当社の奥宮で、祭神は地主神といわれる。

八岐大蛇退治後、須佐之男命が建てた宮殿跡に建つため、日本初之宮といわれる。


大國主神社

和歌山県紀の川市/

地主神の大国主命、天照皇大神、少名毘古那命を祀る。続風土記で、大屋毘古神の処に行こうと当地に訪れたのが創建の由来。


日前神宮國懸神宮

和歌山県和歌山市/式内名神大社/紀伊国一宮/旧官幣大社

同じ境内に日前神宮と國懸神宮があり、あわせて日前宮。または名草宮。

旧事本紀で、ニギハヤヒともに降りた三十二人の防衛の1柱、天道根命が、日前神宮に日像鏡を神体として日前大神、國懸神宮に日矛鏡(鏡でなく日矛という説もある)を神体として國懸大神を祀る。天道根命は、紀伊続風土記で日前大神、国懸大神とともに降りた伴神。紀伊国造系図で天孫降臨で降りた伴神。いずれも、神武東征で紀伊国造に命じられた。

天道根命の5代孫の大名草比古命が神体を奉じて日前神宮國懸神宮を建てる。

後に神別紀氏として紀伊国造家となったが、継嗣断絶のために2度女系継承。平安時代に、武内宿禰の後裔の皇別紀氏の婿養子を迎え、江戸時代に藤原氏北家師実流難波家の庶流飛鳥井家の婿養子を迎える。

天照大神の天岩戸隠れのさい、伊斯許理度売命が日像鏡と日矛鏡を造ったが、日像鏡は意に適わなかった。改めて造った鏡が八咫鏡となる。八咫鏡の本来の名は真経津鏡。日前大神は天照大神の別名といわれる。国懸大神は不明。伊太祁曽神社の社伝で、日前神宮國懸神宮の現社地は、前は伊太祁曽神社が建ってたと伝える。


伊太祁曽神社

和歌山県和歌山市/式内名神大社/紀伊国一宮/旧官幣中社

五十猛命を祀る。紀伊国に木種を齎したスサノヲの子神、または従神の伊太祁曽三神は、他に姉神の大屋都姫命を祀る大屋都姫神社(和歌山県和歌山市/式内名神大社/旧県社)、妹神の都麻都比売命を祀る都麻都比売神社(和歌山県和歌山市/式内名神大社)がある。都麻都比売神社は3社の論社がある。伊太祁曽三神はもとは日前神宮國懸神宮の現社地で祀られてたが、分遷、3社に祀られる。


丹生都比売神社(天野大社)(1)

和歌山県伊都郡/式内名神大社/紀伊国一宮/旧官幣大社

丹生都比売大神を祀る神社の総本社。丹生都比売大神と、子神・高野御子大神を祀る。本来の祭神は丹生都比売大神のみ。空海が高野山金剛峯寺を建てるさい、丹生都比売大神が有田川、貴志川、丹生川、鞆淵川の神領(社領)を譲ったと伝えられ、高野山の鎮守神となる。

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