第8話 さいかいのとおり

 再会の通り



「おじいちゃん、それ前にも聞いたよ」



 ここは何もないところ

 僕はここにいるロボット

 この人はおじいちゃん

 この人はそう遠くない内に死んでしまう

 さいかいのとおりに行く

 身体がだんだん弱ってきている

 1日2回のスキャンを最近4回はしている



「何言ってる?俺はまだ若い」


「そうだったね、お兄さん」


「君血色悪いぞ、ちゃんと食ってるか?」



 こっちのセリフだよ、おじいちゃん

 この人はすごい人だ

 すごいけど人だ

 限られた命だ

 僕を残して行ってしまう

 さいかいのとおりは身体があると通れない

 再会するところ

 再開するところ

 咲いて回転するところ

 最下位だけどまた始められるところ

 まだ元気な頃この人が話してくれた

 人は死んだらそれまでだ

 だけどもしかしたら魂とやら

 そんなものがあるのなら

 死んだら身体から抜け出るのだろう


 考え方なんてなん通りもある

 方法なんてなん通りもある

 通りすがりも通り魔も

 そこらの通りを行く人は皆

 いつかさいかいのとおりへ


 何通りものパターンが僕の中にある

 こうなったらこうするんだよ

 これとは何か

 どう使うのか

 嬉しいとは

 イライラとは

 寂しいとは

 ワクワクとは

 僕にはたくさん入っている



 あなたと一緒にいる日々は幸せよ


 あなたの奥さんは別れ際に言いました

 あなたはにっこり笑って

 それでも僕といきました

 そう決まっていました

 元気な頃の彼の意思です

 何があっても実行しろ

 僕はこれでよかったのでしょうか



「おじいちゃんは幸せ?」


「うん、お前は?」


「僕は」



 ぼくは?

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さいわいなことり 新吉 @bottiti

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