第7話 わざわいのひとり

 災いの1人



「おじいちゃん」



 俺はひとりぼっちだ

 俺は今までいろんな人と会った

 そしていろんな人と別れた

 俺は今までいろんな物を知った

 そしていろんな物を忘れた

 俺はそうしていつか大切なことを

 忘れたり別れたりすることを恐れた

 世界の誰もが怖いことだ

 世界の誰にだって起こりうることだ

 俺はだからひとりになりたい

 だから俺は望んだんだ

 さいごまでだれかといっしょにいない

 俺の面倒をみるのは

 俺の作ったこいつだ


 何も知らない誰かさんに

 面倒をかけたくない

 面倒くさがられたくない

 なんでも知ってる家族に

 面倒をかけたくない

 面倒くさがられたくない

 手を煩わせたくない

 わざわいのひとりになんて

 なりたくない


 俺の望みは叶えられた

 俺の発明は一部に広まったらしい

 たくさん導入される予定だった

 同じ考えを持つ人も嫌がる人もいた

 結局は一部だった

 一部がどうなったかも知らない

 俺もおじいちゃんになっていたから

 跡継ぎも財産も俺はロボットに託した

 おばあちゃんのお世話ロボットに託した

 俺は世捨て人と言われた


 おばあちゃんは別れ際俺に何か言った

 時々思い出す

 また忘れる

 奥さん?

 お母さん?

 姉ちゃん?

 おばあちゃん?

 おばちゃん?

 お前?ずいぶん老けたなあ


 俺はひとりぼっちだ

 周りには知らない人ばかりで

 どこかもわからないところにいる

 それが嫌になったから

 前々から決めてあった通りに

 俺は何もないここにきた

 ひとり子どもがいて

 俺の話を聞いた

 そいつは物覚えが良くて絵が上手い

 だから俺はひとりじゃない

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