第6話 こっとんなしゃわー

 コットンなシャワー



「ねえおじいちゃん、これ見て」



 手に持っているのは歴史の教科書。俺の発明品が一般家庭に普及し、世界では徹底的にモノを減らす運動が行われた。人類の進化や機械の発展により必要のなくなった物を捨てた。いらないとされた。古い人たちの抵抗虚しく、世界には必要とされるいくつかのものだけが残った。俺は、そしてそのうち世界はそうすることによって、老後の人生の楽しみを減らした。



「おじいちゃんはひねくれ者だったから」


「うるさい」


「シャワーが好きなんだよね」


「風呂で死ぬやつらが多いからだよ」



 俺のおじいちゃんは大好きな熱い風呂で浮かんでいた。だから風呂に入らずとも入った気になれる発明で補う。滑って転んで頭打って骨折して入院でもしてみろ、そのまま死んじまう。コットンみたいに全部柔らかい風呂も開発されたがおじいちゃん世代の受け入れは悪かった。シャワーヘッドもコットンのクッション性がある。ふわふわ、軽くて持ちやすいんだけどなあ。



「そうして有名な科学者になりました」


「そうだな」


「そうしていつしかひ孫ができて」


「うん」


「だけどおじいちゃんは」


「お前といる」



 歴史の教科書を嬉しそうに抱えるおばあちゃん。空に浮かんでいる。



「寂しすぎるから、だから僕がいる。僕がおじいちゃんの望むものを描いてあげる。おじいちゃんの面倒をみる」


「本当に絵が上手いなあ」


「やったー」


「そうだ、あれは話したことあったか?」


「なあに」

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