第5話 ことわるなさいわい
断るな幸い
「ねえおじいちゃん、これ見て」
「やめろ」
「どうして」
「俺はお前のおじいちゃんじゃないだろう」
「たしかにそうだよ。でもおじいちゃんはおじいちゃんでしょ?長く生きている男性だ」
「まあそうだな。おばあちゃんじゃない」
子どもは楽しそうにくすくすと笑う。
おじいちゃんはむすっとする。
先ほど子どもが描いた何かが消えた。
「おばあちゃんに会いたいの?」
「言わない」
「それ会いたいって言っているようなものだよ」
手首の機械を使おうとする。
「それやめろよ」
「どうして?」
「お前こそ俺に言葉にさせようとするな」
「この機械を作ったのはあなたでしょ?僕を作ったのもあなただ。僕の考えることはあなたとおな」
「だまれ」
「前みたいに命令できなくなったね、おじいちゃん」
「おじいちゃん、おじいちゃんか」
「そうだよ、僕はあなたの前から消えないけれど、あなたは僕の前からそう遠くないうちに消えてしまうよ」
「一緒に消えるか?」
「嫌です」
「はは、断るなよ」
「ふふ、幸いにもまだ元気に動くので。あなたのおかげで」
彼は俺の子どもでもなく、孫でもない。俺は願ってしまった。俺のことを面倒くさいと思っている彼らに面倒をみさせるのも嫌だった。まだ俺は若かった。俺は1人を願った。絵を描いて、俺の話を聞いてくれる相手を作った。賞をもらった。たくさん導入されることになったが、それには問題がいくつかあった。その解決のため世界はたくさんの決断をした。
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