第3話 さいわいなことり

 幸な小鳥



「おじいちゃん、ことりの話聞かせてよ」


「いいぞ!茶色い羽でなチュンチュン鳴くんだ。怪我を治してまた飛んでいくときには俺も一緒に泣いたなあ」


「絵に描いてみてもいい?」


「おお、見せてみろ」



 手首の小さな機械から茶色を選んで空をなぞる。小さな鳥が羽ばたいている様子が描かれる。



「スズ!帰ってきたのか!」


「おじいちゃん、これ絵だよ?」


「そうか?お前は本当に絵が上手いなあ」



 感心して子どもを褒めるおじいちゃん。

 隣の子は喜んだ。



「そのことりはもういないの?」


「いないなあ」


「どうしていなくなったの?」


「俺らが悪いんだ」


「何をしたの?」


「生きていくために必要なものだけを残して、あとは全部捨てたんだ」


「ことりはいらなかったの?」


「ことりもいる。みんないる。でもみんなみんな捨てずにいることができなかったんだ」


「かとりとこおりはいらないんでしょ」


「みんないる。でもみんなみんな残ることができなかったんだ」


「どうして?」


「限りがあるから」


「おじいちゃんはなんで1人なの」


「みんないない。どうしてだろうなあ」


「おじいちゃんはなんで1人なの」


「俺が望んだからだよ」



 そこでことりは消えた。



「幸せは飛んでいく。不幸もまた同じ。幸いにもみんな全部覚えていない。時々思い出すことがあっても、また忘れられる。また消せる。またかけばいいんだ。また描けばいいんだ」


「俺は、ひとり」


「おじいちゃん?僕は消えないよ?」


「だってそれは」

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