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 高階情報処理会社最上階。沢山のサーバーがひしめいている。ほとんどがゴオオと音を立てながら、様々なランプを点けて機能している。そんな四角い箱達の中に、不自然なシルエットが一つ。人の形をしている。シルエットからして男だとわかった。そのシルエットは左手首にはめた腕時計を確認する。

「何とか上手くいったな……後は……」

 そう呟く男は下卑に喉を鳴らして笑う。しばらくして我慢できなくなったのか、次第に声を大きくして笑い始める。そんな不自然な状況に全くサーバーは気にせず、無機質に作業を続けている。

「後はあのガキ共を始末すれば……全て終わりだ!」


―――――――――――――――――――――――――


 雨に濡れた悠は、ひとまず廃ビルへと戻ってきた。

 部屋の扉が開いたおかげで、窓の隙間から吹き込んでくる風の通り道ができ、轟々と強く吹き込んできた。一度、そして二度。音が止み、悠は予め両耳に塞いでいた人差し指を抜き、窓の元まで近寄る。

 窓の開いている隙間に手をやり、少し力を込め左にスライドして完全に開けると同時に、三枚の紙が勢いよく入ってきた。

 丁度机の上に乗った紙を手に取り、最初の一枚の内容を確認する。ある程度確認したところで二枚目と三枚目の内容に目を遣ると、少し驚いた顔をして、すぐに無表情に戻った。それから、その紙の部分的な内容を別の紙に写し、やがて窓に目を向けて、独り言を呟く。

「ありがとう。久遠」

 それから悠は左のポケットに三枚目の紙を入れ、反対側のズボンのポケットに手を突っ込み、霊氛粉の入った灰色の小さな袋を取り出して、紅色の紐を解き中身を確認する。白い粉が袋の大きさの三分の一入っている。悠は再び紐を結び、ポケットに仕舞う。そして最後に、机の引き出しから、ある物を取り出し、それもポケットに突っ込んだ。

 それから悠は窓を閉め、木製のドアを開けて、その場を去った。

 一枚目の紙には栄治の生まれてから亡くなるまでの経歴が簡潔に、二枚目の紙には前髪を全てオールバックにした髪型で、プライドを人一倍持っていそうな雰囲気を持つ男の写真が貼り付けられ、経歴が詳しく書いてあった。

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