第2話

「えぇ〜!?何で!?」

「いや、何でってそういう決まりだから。そもそも一年生じゃボールがゴールに届かないだろう?」

「あ、先生、知らないんだ?膝を使えばねぇ〜…ってちょっと!?先生!?」


ピシャリッ!職員室のドアが閉められる。


「あー、もう!次はあっちのドアから入るわよ…ってアキちゃん、何で引っ張るの!?」

「さ、さっちゃん、きょうはやめとこ?せんせ、みんな、こまってる」

「だめよ、こういうのは多少強引に…って何でそこで泣くかなぁ…分かったわよ、今日は教室に帰りましょ」

「………ごめんね」


二人でとぼとぼと廊下を歩く。


「アキちゃん、何しに付いてきたのよ」

「だ、だって、きゃぷて、がついていけって」

「あぁ…」


おそらく、うちが暴走しないよう彼女がこの子についていくよう指示したのだろう。

うちは別に年中怒っているわけではないので、見事な采配である。


ガラガラ…と、一年生の教室の扉を開ける。

「キャプテーン、帰ったわよ〜」

「おかえり」


彼女は少しにやついた顔で言う。

「どうだった?」

「………だめだった」


うんうん、と頷きながら彼女は話を聞いてくれた。

「体格が違いすぎるからね、危ないんだ、先生達も理由もなく制限してるわけじゃない」

「でも、四年生までなんて待てない…」

うちは少し涙声になる。


「そうだなぁ、低学年だけで練習する小学校もあるんだが、ここはそうじゃないし」

うーん、と彼女は首を捻る。


うちは知っている。彼女は考えたりはしない。

この仕草をする時はもう答えが出ている。

それを知らない皆は一緒になって、うーん、という顔をしている。

うちだけ平然としてるわけにもいかないので、一緒になって、うーん、という顔を作ろうとした時、


「みんなであそこ行くか」


彼女は今思いついたようにそう言った。




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