25話愛称

もしそうなったら、


敬君という名称も普通になってしまい、


人前でも平気で使ってしまうのではないかという恐れもある。


もしくは僕の恥ずかしい感覚がマヒしてしまい、



敬くん、敬タンでしか受け付けない身体になってしまうのかもしれない。


少なくとも今こうして坂野君名称でいじられて恥ずかしいと思われているのだから


僕の恥ずかしさメーターは正常に機能しているということを悟った。


まあ、今回は僕の心を見破られて、



そこをいじられたことに対して恥ずかしさを覚えたのであって、



ベクトルはそもそも違うのだけれども。



それにしても、ほかの人はこうした光景を見てどう思っているんだ。



桜井と一緒に笑っているけれども。翌日変な噂を流したりしないだろうなあ



杞憂か。いや、人生においてリスクなんてものは背負うべきではないのだ。


「ねえ、どうだった」


「え?」


「ボランティア。悪くはないでしょ」


この場合は「うん。そうだね」というべきなんだろうが。



正直まだボランティアの魅力というのを理解しているわけではないのだが、



一応セオリー通り答える。



「うん。そうだな」



そういうと彼女は目をキラキラさせた。


「でしょ」


まあいいだろう。


本日の報酬は、彼女の笑顔ということで。


いつしか遊説を終えた候補者のおじさんが、僕たちのところに駆けつけた。



僕の募金箱に3万円を入れて握手をした。



そして「がんばれよ」と一言いって去っていった。

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