第4話

 ボーン。

 振り子時計ふりこどけいが1かいって1しました。この時計とけいはパパがなにかの記念きねんもらってきたものです。のぶくんは時計とけいのチックタック、チックタックというおとがママとおなじようにボリュームががっているようにおもいました。そしてボーンというおと内心ないしんドキッとしていました。

「サエちゃん、サンドイッチべよう。」

 のぶくんは子供部屋こどもべやちかくまでって、こえけました。でも、なかではまだサエちゃんがシクシクいていました。

 のぶくんはなんだかとってもわるいことをしたような気持きもちになりました。それで、部屋にへやはいってサエちゃんのとなりにすわると、

わるかったよ、戦争せんそう終了しゅうりょう。サエちゃん、サンドイッチべよ。ママのサンドイッチのお弁当べんとうだよ。」

そうおはなししました。するとサエちゃんはなみだのいっぱいたまったげてニコッとわらったのです。

「サンドイッチ! サンドイッチのお弁当べんとう。」

サエちゃんはちいさなオモチャたちをママがつくってくれた花柄はながらふくろはじめめました。のぶくんもそれを手伝てつだいました。

 この人形にんぎょうたちは今度こんどはいつ子供部屋こどもべやならべてもらえるのでしょうか。もしかしたら、もう永遠えいえんにこのふくろなかにいることになるのかもれません。

「サエちゃん、ジュースむ?」

「いーおん。む、む。」

のぶくんは冷蔵庫れいぞうこからジュースのびんすと、サエちゃんのコップにいであげました。サエちゃんは何故なぜかジュースのことをいーおんといます。もっとちいさいころはジュースだけでなく、おみずやおちゃもみんないーおんでした。いまではちゃんと区別くべつがつくようになったのですが、ママがいているこのジュースだけはいまでもいーおんなんです。

 のぶくんにはその理由りゆうまったくわかりませんでした。

「サエちゃん、ジュース、オレンジジュース。いーおんじゃないよ。」

のぶくんはまたおにいちゃんかぜかせてサエちゃんにいました。

「いーおん。」

でもやっぱりサエちゃんはいーおんです。

「だから、ちがうって。」

ちがわないもん。いーおん。」

「もう、サエちゃんはバカなんだから。」

「バカじゃないもん。」

またサエちゃんのくちびるとがしました。のぶくんはだまってラップをるとサンドイッチをはじめました。

「いただきましゅ。」

サエちゃんはそうってサンドイッチをりました。もぐもぐ、ちいさなくちいっぱいにパンを頬張ほおばります。するとレタスがぽろぽろとテーブルにちました。

「サエちゃん、こぼしちゃだめ。」

でも、サエちゃんはもぐもぐ。今度こんどはトマトがべちゃっとゆかちました。

「ああ、だめだって。としちゃ。」

今度こんどあさのママのこえくらいおおきなこえでサエちゃんをしかりました。

にいや、おこらないでくだしゃ〜い。」

べていたくちけてそううものですから、サンドイッチがバラバラとテーブルやゆかにもちてしまいました。そしてサエちゃんのにはまたなみだがいっぱいになりました。

 のぶくんはサエちゃんがすこ可哀想かわいそうになりました。それで、サエちゃんにタオルをわたして、自分じぶんはぞうきんをってるとだまってゆかのサンドイッチをひろあつめました。

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