第5話

 ひるはんわって、しばらくテレビをていたふたりでしたが、たい番組ばんぐみもなくなってブンッとリモコンのスイッチをると、部屋へやいままで以上いじょうしずかになりました。

 部屋へやしずかさとは対照的たいしょうてきにそとはビュービュー大風おおかぜれています。サエちゃんはまどのそばへってレースのカーテンをすこけるとそとながめました。

かぜさん、いてるね。」

サエちゃんがポツンといました。

「うん。」

のぶくんはしずかにうなづきました。

 ママはかえってません。投票とうひょうったあと、本家ほんけっているのでしょう。きっと選挙事務所せんきょじむしょになっている本家ほんけ大忙おおいそがしで、かえるにかえれないのでしょう。

 のぶくんはのこされたようなさびしい気持きもちになってきました。それで、窓辺まどべのサエちゃんのところへくと、サエちゃんのあたまうえからいっしょにそとながめました。

 「くもってるね。」

のぶくんがサエちゃんのあたまうえいました。

「クモきらい!」

サエちゃんがおどろいたかおをしてうえました。

サエちゃんはクモが大嫌だいきらいです。バッタやカマキリは平気へいきなくせに、ちいさなちいさなクモでも大騒おおさわぎしました。

「クモじゃないよ。おそらくも。」

「うん。くもってましゅ。」

 安心あんしんしたサエちゃんはまたまどそとうつしました。空一面そらいちめん灰色はいいろおおっているくもでしたが、よくるとものすごくはやうごいています。

 「そらくもうごいてるね。」

とサエちゃん。

「え? ほんと?」

のぶくんもくも見上みあげますが、そらいっぱいに灰色はいいろくもめられているだけにしかえません。

 「ほら。どんどんどんどんながれてっちゃう。しゅごいね〜。」

のぶくんもをこらしてくも見直みなおしました。

すると一面いちめん灰色はいいろではなくて、灰色はいいろにもいところやうすいいところがあって、模様もようになっていることにきました。でも、サエちゃんがうようにうごいているようにはえませんでした。

「しゅごいね〜。くもはどこまでつながってるんだろ。全然ぜんぜん途切とぎれないもん。」

 サエちゃんはじっとくもていました。すると突然とつぜん

「あ、だれかいる!」

さけんだのです。サエちゃんはさけぶと同時どうじそらくもゆびさしました。

だれもいないよ。サエちゃん、くもうえにいるのはんだひとだけ。」

 のぶくんは先月せんげつ親類しんるいのおばあちゃんがくなったことをおもしました。そのおばあちゃんはのぶくんにランドセルをプレゼントしてくれたひとです。ねん何回なんかいかパパがくるま運転うんてんしてみんなでいにくおばあちゃんでした。

 「んだひとじゃないよ、だってこうへはしってったよ。」

サエちゃんはまだくもをじっとていましたが、のぶくんにそういました。

「もう、サエちゃんてば。」

 おばあちゃんがんだとき、パパがおばあちゃんはくもうえったんだとおしえてくれたのでした。たしかにおばあちゃんをいたけむりくもぞらのぼっていったのでした。

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