十二話

 行きと同じように別れ、それぞれの航空機に乗る。帰り道はやや警戒しながらではあるものの、少しスピードを上げることになっていた。

 何事もなく、少しずつ自分たちの帰るべき街、リベルタスへと飛ぶ。道中、司令部との通信がいくらかあったが、マシとはなったとはいえ、ノイズが混じっていた。



 あと少しで日も落ちるという時間に偵察部隊は東支部へと帰還した。


 航空機の整備、装備の整備、その他もろもろの作業を終え、一度座って休憩したいと自ずと三人は待機室に集まった。


「お疲れさん。」


 そこには三人が返ってくると報告を受けて、待機室で待っていたらしいハネスが椅子に座ってコーヒーをすすっていた。


「ほら、お前たちの分も淹れといたぞ。」


 ハネスは椅子に座り込んで表情を少し崩した三人の前に、コーヒーをずいと出す。

 彼にしては珍しいことだった。別に仲が悪いだとかそういうわけではなかったが、彼はどうにも気遣いのできない人間だった。しかし、そのハネスも今回の出来事にはさすがに思うところがあったらしい。

 ジークリットは少し欠けたカップに口をつける。


「さて、おかえり、とねぎらいたいところではあるんだがな……すぐに書類をまとめてほしい。」


 すぐにでも熱いシャワーを浴びて、明日に備えたいと思っていたが、そういうわけにはいかないのだ。

 しかたがないと重い腰を上げ、ジークリットは書類一式を取ってくる。日報はともかく、報告書は航空機の後席に座った者が書くのが偵察部隊の慣例となっていたのだ。

 ハネスは書類の要求だけし、しばらくしたら受け取りにくると、足早に待機室を離れていった。


「これで終わりでいいんですか?」


 空になったカップを手で遊ばせながら、エセルは目の前のアベルに問う。


「そうだな。これで、俺たちの仕事は終わりだ。」

「でも、何もわかっていません……」


 アベルは首元のボタンをはずし、残ったコーヒーを飲み干す。


「原因究明が俺たちの仕事じゃあない。それはあくまでも後続の北支部の部隊やらこれから送られるだろう調査隊の仕事だ。」


 ジークリットは書類から少し目を上げて、少し不満げに唇をかみしめる後輩を見る。

 彼女の口元をアベルも見ていたらしい。空を噛むと、小さく言葉を続けた。


「これは、独り言だからな。」


 アベルはそれからつらつらと自信がオズワードで知った事実と推測を並べた。

 いくらかまとめると、以下のような話であった。


 まず、オズワードの司令部の壊滅について、間違いなくオズワード市民による暴動が原因であった。そして、実際のところは司令部にはそれほど人数はいなかったらしい。残っていた記録によると、大部分が暗号で書かれていたため解読はまだではあるが、街のどこかにある研究施設の視察に上層部の多くが言っていたようだった。

 市民のよる暴動と同じタイミングで機械獣がオズワードに引き寄せられた。これについてはタイミングから考えて、人為的なものかもしれかかったが、そのすべてが想像でしかない。

 暴動の原因はおおよそ誰もが思いつくものであった。オズワード軍部による圧政。それが全てであろう。圧政の原因となったであろう歴史まで遡れなくはない。簡単に言ってしまえば、「歴史は繰り返す」ということであろう。圧政された側がする側に変わったということであった。

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