捨てる神あれど拾う神あらず
予測不能の第八次
戦争三日目の朝日が昇る。
ビル屋上の貯水タンクに腰かけ、潮風に髪を撫でられる
翼を折り畳んでその場に片膝をつき、首を垂れて傅く。
「お疲れ様でした、召喚士様」
「そっちもお疲れ様。どうだった? 港の戦線は」
「ヴォイの
「
「
「それは驚きだね。誰だい?」
「それが、自らを海神と称しておりまして……事前に得ている情報から
「海神ねぇ……」
アックアの仕業だろう。
何をしたのかまでは調べなければわからないが、しかし彼らの仕業だろうことは間違いあるまい。それについても、調べる必要がありそうだ。
無論、物事には優先順位が存在する。
屍女帝の魔術。海神と名乗る存在。そして、都市一つを崩壊させかねない魔導人形。
今までの戦いも一切の例外なく、一人一人が一癖も二癖もある強者揃い。しかしここまで複雑で、様々な事情が絡んだ戦いはなかった。
史上初の一般人がいる国での戦い。天界の玉座に座る者達の目的は、召喚士の考えるうちは大したことがなさそうだが、放置しておけば良からぬ事態になりそうな気配を感じる。
この戦いにおいて単純なのは、絶対強者の彼女だけなのが皮肉である。
「両天使、他愛の下へ向かってくれるかな。また女神の役を演じていて欲しい」
「召喚士様は」
「うん……ちょっとね。これから奔走しそうだ。自分から裁定者の役を買って出たからね。手抜きはできない」
召喚士は颯爽と跳ぶ。
戦争三日目、残った戦士八人。
途中経過は今まで通りか、むしろ少し展開としては早いくらいだ。
だがどうも、今回は色々と異質な存在が集まり過ぎているようにも思える。
この戦いは今まで通りのようにはいかない気がする。これまで七次の戦争では起こらなかった何かが起こると、虫の知らせか風の便りか、勘がそう囁いている気がする。
第八次はどうにも、予測不能の大戦となりそうだ。
故に召喚士は自足を速めて跳ぶ。この戦いの結末がどのような形になろうとも、最悪の展開だけは避けられるようにと。
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