最悪・凶悪・絶対悪
誰が悪いわけでもない。
世界が、世間が、社会が悪いわけでもない。
政治が悪いわけでもないし、独裁者が悪いわけでもない。
ならば誰が悪いのか。
一体何が悪いのか。
原因は、根源は、一体何か。
そうだ、奴だ。奴に違いない。奴しかいない。
すべてあいつが悪いんだ。
だから誰も悪くない。誰のせいでもない。
全部あいつが悪いんだ。
何もかもあいつのせいだ。
だってあいつは
この世全ての悪心。
悪と名のつくすべての権化。だから全部あいつが悪い。
環境破壊も世界中で起きている紛争も種族差別も食糧不足も、すべてあいつのせいだ。
あいつが何もしていない証拠なんてない。
あいつが何かをした証拠もないが、しかしあいつは絶対悪。
この世全ての悪ならば、あいつが悪いに決まってる。
そんなあいつが、今回の第八次
殺せ、殺せ、死んでしまえ。
あいつはこの世全ての悪。
あいつは最悪の絶対悪。
故に誰か、誰か奴を殺せ。あいつはとっとと死んでしまえ。
あぁでももしかしたら、もしかしたら。
どうしよう。もしもあいつが勝ってしまったら。
もしもあいつが勝つようなことがあれば、それは世界の終わりそのものだ。
何せあいつは絶対悪。
この世全ての悪の権化。
もしもあいつが世界の覇権を握るようなことがあれば――
あぁ、終わりだ。
終わりだ。
絶望だ。
世界が終わる、終わってしまう。
だから殺せ、堕とせ、殺してしまえ。
絶対にあいつを勝たせるな。
絶対に
あいつが勝つようなことがあってはならない。
絶対に。
もしも、もしもあいつが世界を支配するような日が来たら、人々は言葉を失うだろう。
そして静かに、自らの命を閉じるだろう。
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