もうあの頃には戻れないな、とふと思うことがある。それは後悔や反省であると同時に、懐しさと当時の空気感を纏った、ずっと忘れたくない思い出でもある。
振り返った時になって、気付く。それが「青春」特有のエネルギーに満ち溢れた若さや気力、感情の起伏の激しさといった、その時期にしか発揮することのできないものであったことに。
けれど、その時期に起きた内的変化に具体的な名前を付けようとすると、そう上手くはいかない。学校生活を通して、積み上げてきた思い出だってほかの人から見れば、ちっぽけで取るに足りないものかもしれない。また、自分の中だけに秘めておきたい気持ちも少しはあるのかもしれない。
「(中略)青春なんてのはあとから人が思い出すためのいいタイトルなのかもしれないね。」本文より
青春というタイトルで片付けられるほど、物事は単純ではなく、それを当時の私たちが定義するには若すぎた。
今だから分かる「青春」に、向き合うための物語。