第3話 夕日を蹴る その3

Ⅰ:猫のあくび

Ⅰ-3:ひとすじの月


海風にあおられようとも力強く明日へ飛びゆくアキアカネ


喧騒が暑さにゆれる夏の歩道汗ぬぐう我もかげろうになる


黄緑のソファベッドに寝転んでいつかの歌を聴く夕月夜


階段の上隣家の飼い猫あくびして遅い帰りの我を出迎え


台風が野良猫の声を運んで来る余計に不愉快な晩夏


あの鳥が飛べるほどには跳べないとわかりはじめた九月の蛙


野良猫はしゃなりと歩く夜明け前 屋根の上にはひとすじの月


陽が沈みよせては返す波の間に藍を重ねて夜は来たる


一日をめくるごとに日は短く西より伸びる爽秋の影


月光のスポットライトをあびながら夏楽団は疲れもみせず


黄昏の都会は低く石ころも人も車も皆影の中


朝まで語るカエル雨に歌うスズメ ここはそう眠らない地球(ホシ)


制服のスカートの裏に青春を隠したことさえ忘れてた春


雨上がり射す光に舞う埃静けさでさえ動いているんだ

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