第15話 ラブは世界を救う
僕はそういえば、と思いだしたことがあったので、ノワールにお願いする。
「ノワール、これから先僕に触らないと誓ってくれないか?」
「えー!! そんなのやだよお!! なんで! なんでノワールがタカアキに触っちゃだめなのっ!?」
嫌だと言われても、こっちもノワールが触れたところから広がるえも言われぬ悪寒には、いつまで経っても慣れられそうにない。
ノワールを起こした時には感じなかったから、どうやら自分から触りに行くのはよくて(それでも、すこーしだけぞわぞわする。微量の電流が流れてくるような)、ノワールから触られるのはだめらしい。
ただ、僕が幼女に言われるままに一方的にべたべたと触っていたら、いくらなんでも事案だろう。
幼女との絡みには、やはり多少『僕は幼女に振り回されているのであって、好んで彼女と触れ合っているのではないのですよ』というポーズが必要だろう。
「ゾワゾワしなかったらタカアキに触ってもいいの?」
「そりゃもちろん…。えっ、そんなことできるの?」
「できるよ~」
そう言うとノワールはくるっと回って可愛いポーズを決めたかと思うと
「『マジカルラブ☆ウォール』!!」
ナイター設備もびっくりのとんでもない光度で光った。
「んぎゃああああ!」
目がっ! 目がー!!
――そして僕は目がつぶれる瞬間見たんだ。
彼女が光った瞬間…横にいた妖精がサングラス…いや違う…あれは…太陽とか見る時に着けるやつ…とにかくあの、光をすごく遮るサングラス的な何かを装着したのを…。
お前…どこから出したそれ…。
僕は目を覆い、ゴロゴロと地面を転がっていたが、やがて光は収まった。
さすがファンタジーの世界だ!! 目はなんともないぜ!!
恐る恐る目を開けると、ノワールの前にふわりとまだ直視できるほどの幾分光度の下がった光の玉が浮いている。
それはノワールにくっ付いたかと思うと、吸い込まれていった。
と同時に、ノワールの右腕にしゅしゅると光る包帯が巻かれる。その包帯は撒きつくと、普通の白い包帯に姿を変えた。
「これでタカアキに触っても大丈夫!」
「そ、それはこの世界にない魔法だね?」
「うん! 『あまりものにもフクがあるよね!』の中に出てくるアニメ『ぎゅうっと! 絞りたてフルーピュア』のなみゅにゃが使う魔法だよ!」
えー…、さっきので全部じゃなかったのか…。あ、僕ちょっとだけ教えてって言ったか…。本当に何でもアリだなこの子…。
小説の中に出てくるアニメの設定の魔法まで使えるとは。
「アニメ?」
いつの間にかサングラスを外したリーンが僕に訊ねる。
「えーと…アニメって言うのは…」
ちょっと言葉で説明するのは難しいので、僕の頭を読めると言うリーンの特性を生かし想像で伝えた。
「なるほど、アキの世界にはそういう箱の中で絵が動く道具みたいなものがあるのね」
「うん」
「それでその『マジカルラブウォール』? っていうのはどんな魔法なの? 他の物語で魔法はないとかなんとか言ってなかった? おめえの『黒歴史』の中には設定いくつあんの? どうせまだ出てねえのあるんだろ? あ? 後だしどんだけあんだこら?」
ごめんなさい、キレないでください。
「いやいやいや! でもかえって良かったよ!!」
「は? なにが?」
「『マジカルラブ☆ウォール』は、敵に対して使う技で、その技を使われた敵はもう悪いことをできなくなるんだ」
「悪いことって?」
「えっ…えと…あの…、道端にごみを捨てたりとか、人を襲ったりとか…そういう…」
ちょっと
「道端にごみを捨てるのと、人を襲うのが同列の悪いことになるのかはまあ置いといて、もしかしてこれでノワールは人を必殺するような魔法を使えなくなったってこと?」
ノワールは元気いっぱい答える。
「うん! 使えないよ!! でもいつでも解除できるよ! 敵のボスが使う『マジカルラブ★ウォール』は、ライトリングパワーを使う主人公と相反するダークネスリングパワーの魔法で、主人公の『マジカルラブ☆ウォール』を解除しちゃうんだよ!! これは、悪いことに入らないの。だって元々持っているものを封印してるだけだから」
そうか~……解除できちゃうか~。
「おい、だめじゃねえか。それにどうせちょっとしか出てこない物語の中のアニメだろうに、どこまで設定考えてんだおめえ?」
「ごめんなさい」
うっうっ…僕だってどの物語をどこまで設定したかなんて覚えてない…。
とりあえずノワールの必殺傷系の魔法は図らずも封じられたということでそれは良かったと思う。
「でも、その右腕以外で触っても大丈夫なのか?」
「あ、これはねノワールの力を封印したらこうなるんだよ。『封印されし右腕』なの! だから、右腕以外も触っても大丈夫だよ!」
ふっ、『封印されし右腕』!!!
紅い髪、紅い眼、封印されし右腕、眼帯…!!
すさまじい中二パワーを感じる…
いや…まだだ、まだある…。
もうこの際だ、気になることは全部聞いておこう。
「ノワール…その眼帯の下はもしかして…」
「あ、気づいた? タカアキなら気づいてくれると思ったんだ~」
そう言って彼女は眼帯を外す。
その下から出てきたのは金色の瞳。
紅い眼と金色の眼のオッドアイ!!
中二病の役満や!! (あ、思わずエセ関西弁が出てしまった)
(あ?)
どうやらエセ関西弁に反応したらしきリーンが僕を睨んだ。
関西人って、ほんとにエセ関西弁にうるさい…。
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