第14話 必殺技は必殺だから必殺技2

「ちょっと、アキ…それぞれどんな魔法か説明して…。なんとなく『ラッキーぱにっく』以外ヤバそうな雰囲気はあるけど…」

「説明…しなくちゃだめ…? ノワールにはどれも使わせないから…、このままそっとしておいてもらうっていうのは…」

「説明しろ」

「はい」


 やだもう~またえぐられるのね、僕の…このガラスのハートを…!!


「そういうのいいから」

「はい」


 恐い。


「えーまず…『原子縛弾げんしばくだん』、あとみっくばいんどと読むんですけども…こちら、一発撃つと何万人もの命を奪う原子爆弾という世にも恐ろしい兵器がありまして。炸裂の威力もさることながら、爆発した後放射線という細胞をズタズタにする見えない線が出て、爆炎だけではなく放射線でも人が死にます。ほぼ最強の兵器です」

「うん」

「それをもじって、こういう技名を…あの、えと…近未来ガンSF物…ですので」

「え、なに?」

「近未来ガンSF物…」

「近未来、ガンSF物…」

「はい、この『エターナルダークサーガ(仮)』にはない、弓よりも強力な銃という兵器があるんですけども、それがガンなんですが、それに込める弾が超小型の原子爆弾なんです」

「何万人もの命を奪う!?」


 ちょっと意味が解らないとばかりにリーンが驚く。


「そうです。でもそれだとちょっと危なすぎるので、それでその…撃たれた人の体内で炸裂した後、本来であれば体外にも出る放射線を近未来パワーで撃たれた人の体の中で抑え込めるという…」

「…近未来パワーで…」

「確実に撃たれた人間だけを死に至らしめる兵器なんですが、周りにいる他の人は大丈夫っていう…そういう…」

「そういう魔法?」

「……魔法というよりは…超小型原子爆弾の物理攻撃…。それが『シューティングサウンド』の主人公の必殺技なんです…。多分ノワールは、その技を魔法という概念で使える…」

「やばいやつやんけ」


 リーンさん素が出てます。


「例えばその弾が撃った相手を貫通したら…とか、外したら…とか」

「…しません」

「えっ?」

「その辺はその…一撃必中で…、なにせ戦闘を決める必殺技なので主人公補正がかかります」

「なるほど」


 主人公補正という言葉で納得してもらえるのはありがたい。

 でも、自分が作った必殺技の説明って…こんな辛いものなのか…。

 ノワールの繰り出した言葉から次々と『黒歴史』が掘り返されて、僕の精神ライフはもう0に近いんですが…。


「後の三つの説明もいりますか…?」

「同等にヤバいやつなんか?」

「多分『ラッキーぱにっく』以外は出したら敵が確実に死にます。もしかすると他の二つの技は使う場所によっては近隣にもとんでもない被害が…」

「えらいことやんけ」


 そう、である。

 僕はこの世界では誰も死なせないと誓ったのに、ノワールが一つ規格外の魔法を使うだけでおじゃんだ。

 絶対にノワールにこの世界の外の魔法を使わせてはいけない。


「じゃあその、確実に敵が死んでしまう二つの説明はええとして…。『ラッキーぱにっく』? とかいうのは人死にが出るような魔法じゃないんやろ? その魔法はどういうことが起こるのかだけ追加で説明してくれる?」

「えっ」

「なんや?」


 一番説明したくないのを説明しないといけないのか…。

 しかし、ここで嘘を吐いても多分どこかでバレるだろう…。


「ええと…『ラッキーぱにっく』は…多分…使うと主人公にエッチなハプニングが…起こります」

「は?」

「この物語の主人公は僕なので、周りのヒロインたちによって僕にエッチなハプニングが…」

「」


 …うん、分かってた。

 そういうリアクションになるのは…。


「それだけは絶対使わせへんように」

「はい」


 説明が終わり、リーンは一つ溜息を吐く。


「まあ…あの子を主人公に据えたら血みどろのファンタジーものになりそうやし、主人公もアキでええわ」


 旅が始まる前に最強は返上することになったものの、総合的な判断により僕はからくも主人公いられるようだ。

 僕の精神ライフと引き換えに…。


「というわけで、このままノワールを置いて行って知らないところで魔法を使われても困るので、連れて行くことにしたいけど、リーンはどう?」

「異議なし」


 満場一致で可決である。2人しかいないけど。


「ノワール、おいで~」


 1人〇×をやっていたノワールを呼んで、一緒に旅をすることを説明する。

 ノワールは飛び上がりながら全身を使って喜んでいた。

 対照的に僕とリーンはとんでもない爆弾を抱え込んだと肝がヒエヒエだったが。

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