第13話 必殺技は必殺だから必殺技

 今まで話せなかったということもあるのか、ノワールのおしゃべりは止まらない。


「それでね! それでね! 髪の毛ね赤いのね! いいでしょ!! でもね髪の中の方はね白色なんだよ~! 可愛いでしょ!」


 えへへ、と照れながら自分の長い髪の毛の色の説明をし出すノワール。

 これは最近流行りのインナーカラーというやつだろうか。 

 でも何? 髪の毛?


「え? うん…? 可愛いよ」

「タカアキとね、お揃いじゃないんだけどね! 二つ名はお揃いじゃない方がいいと思ったから!」


 ちょっと要領を得ないんだけど、一体この子は何を言いたいのだろうか?

 僕は個人的には痛い思いをしたし、二つ名なんてあってもいいことないと思うんだけど…。

 あと、お揃いって…?


「あのね、ノワールはタカアキと対になりたかったから…。だからね! ノワールは『純白と緋色を纏いし者』だよ!」


 ぎゃああああああ!!!!

 はい死んだー!

 僕また死んだよ!

 だからもういいでしょ! 次! 次生まれ変わらせて!!

 もしくは僕を無にかえして!!

 なにこれ、『黒歴史』だから? 『黒歴史』は実体化しても無邪気に僕のこころをえぐってくる感じなの?


「この子の方が、ちゃんと言葉を分かっとるなあ。アキより賢いわ」


 カンサイベン漏れてるぞ!!

 素で感心するのやめろ!!


「」


 僕が地面に突っ伏してピクピクと悶えていると、


「ねえ、タカアキ。ノワールも一緒に行っていいでしょ?」

「え!?」


 僕はがばっと顔を上げた。

 気付けばノワールが僕を見下ろしていた。


「いやいや、ダメだよ!」

「なんで!!」


 ぷくぅっと口を大きく膨らませてノワールは地団太を踏む。


「だって危険な旅だし、多分…」


 いくらなんでも幼女連れで魔邪王討伐への旅というのはちょっと…。

 その辺りのなんていうか倫理観みたいなものは大切にしていきたい。


「でもノワール強いよ!」

「…ええ…」


 強いと言っても、幼女だし限度というものがあるだろう…。

 そりゃまあファンタジーの世界だから、強い幼女はいっぱい存在するけど、これは僕の考えた最強の僕の物語だし…。


「この世界にない魔法だって使えるし!」

「……ふぁえっ!?」


 え、なに? この世界にない魔法ってなに!!

 幼女だから使えるの!?

 この世界の幼女は大人より強いの!?

 いや違うか!! もしかしてこの子は『黒歴史』は『黒歴史』でも『僕の黒歴史』だからか!?

 『エターナルダークサーガ(仮)』以外にも、思春期にありがちなことながら、いくつか別の物語を作っている。

 近未来ガンSF物『シューティングサウンド』、侍物『一心』、戦争物『ウォーソルジャー・レイン』、学園物『あまりものにもフクがあるよね!』。

 スポーツは…部活とか文化部でやってないし分からなかったから作ってないけど…。

 その中で一番長く続いたのが『エターナルダークサーガ(仮)』だった。


 でもおかしい。

 他の物語で魔法は作ってない。

 それは単純に、魔法を使うような物語は他にはなかったから。


 この世界にない魔法とは一体なんなんだ…!!?

 純粋に気になる…!!


(それがホンマやとすると、ホンマモンのチートキャラはこの子やなあ…。ノワールちゃんが最強どころか神やん。神降臨やん(笑)アキと違って言葉もちゃんと使えるし、最強返上ののち主人公交代でええんちゃうか?)


 プー! クスクス! とにんまり顔のリーン。

 むちゃくちゃ腹が立つ顔をしている。

 待て待て! ちょっと待て!


「ノワール…使わなくていいから、どんな魔法が使えるのかちょっとだけ教えてくれるか…?」

「んとねえ…『原子縛弾アトミックバインド』でしょ~、『無塵刀破むじんとうは』でしょ~、『散弾雨レインバレット』でしょ~、あとね!おもしろいのはね! 『ラッキーぱにっく』!」


 うん、分かった。

 うん…。


「ノワール、ちょっと妖精のお姉ちゃんと相談があるから、一人で遊んでてくれるか?  あ、魔法は絶対に使わないように」

「また一人で遊ぶの~?」

「少しの間だけだから」


 しょんぼりしながらノワールはしぶしぶ了承する。

 一人遊びを始めたノワール(あ、1人〇×やってる…今は腕が二本しかないのに…)から離れて、リーンとひそひそと話をする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る