第四回

 お便りの紹介から始めます。

 まず、最初のお便り。「少し文芸をなめているのではないか」

 あのう、これはあくまで「コロニー通信」の私のコーナーなんで。これは、これです。そして、それは、それです。あれ、何だったっけ。

 私達は故郷の地球から時間的にも空間的にもはるかに遠いところに来てしまいましたが、このコロニーには膨大なライブラリィがあります。地球文学というジャンルもあります。大昔の純文学やSF、その他もあります。私も一応そういうものを少しは読んできたんです。その道の達人による名作があることも分かっています。しかし、私はいきなりここに呼ばれ、とにかく何かを書かなければならない。タイム・スケジュールがせっぱつまってるんです。オレにどうしろっていうんだ! いや、何の話をしてたんだっけ。まあ、とにもかくにも、文芸について皆様方にも大いに議論していただきたい。はい、そういうことです。

 では、次のお便り。「人間やると決めたら一生懸命やらなければならない。どうかやる気を出してください」

 それから、「超未来でも人間辛抱が大事ですよ」

 はい。これらは私の人生の大先輩にあたる方々からのお便りでした。


 さて、この宇宙コロニー“ガイア‐01ゼロワン”にも四季があり、日本エリアにもまた新しい季節が訪れようとしています。水素核融合エネルギーの調子も相変わらず良いようです。一説によれば、コロニー内の生活様式は基本的に地球の21~22世紀ごろとあまり変わりがないとも言われています。私は歴史にはあまり詳しくないので、これも確定的なことではありません。

 え~と、そうそう、文芸をやんなきゃいけなかったんだね。

 色々考えたんですが、今回はアフォリズムをやってみようと思っています。

 アフォリズムというのは、すなわち、警句、名言のようなものです。私がやると軽句、迷言、阿呆リズムになっちゃうんだけどさ。えへへ。いや、とにかく、いってみましょうか。アフォリズム。


 〇アフォリズム (4000~4001)


 1 人間とは自己言及のパラドックスそのものである。


 2 やってみなければ失敗も成功もない。


 3 分からないなら結論は出すなよな。


 4 はたして「神は死んだ」のであろうか? 「神は昏睡状態」ぐらいにしといてくれないか。


 5 絶望するのは簡単だ、簡単すぎて話にならない。


 6 完全なる狂気とはどんなものでしょう? ちょっとずれてるから狂ってるのかな? 頭が空っぽとは違うんだろうな。そんなものあり得ないのかな?


 7 古典的科学が、ラプラスの悪魔を生みだしたとすれば、現代の科学は、何かしら予測不可能な、偶然性の、どうしようもない、為すすべもない、という新しい悪魔を生みだしたのではないだろうか?


 8 必要なのは、希望ではない、勇気なのだ。


 むむむっ。これらは結構哲学的とも言える内容でしたね。はい。ちなみに、私が新手あらての神経症にかかって病院に入院していた時に書き溜めたノートから抜粋したものなんですが。何? 余計なことを言うなって? 大丈夫、分かりゃしないって、本当だか冗談だかね。うふふ。まあ、もう言っちゃったから。

 さて、次は私が娑婆シャバに戻って、もう少しまともになってからのやつです。はい、いってみよう。


〇アフォリズム (4001~4004)


9 昔、私は狂気にあこがれていました。今は正気にあこがれています。笑い話にもなりません……(なんて)


10 何故、仕事をサボってはいけないのですか? (とか)


11 自分が本当に大事なものって、あまりにも大事すぎて、自ら壊してしまうんだ。何てせつない心理なんだろう。


12 「愛」なんて幻想や錯覚のようなものだと言われがちだが、とすれば、「憎しみ」もまたそのようなものとしなければならない。


13 今ひとつパット・メセニー。(何だこれは)


14 恋とは逃げ水のようなものでした。


15 恥をかいた方がいいのか、かかない方がいいのか、それが問題だ。

  失敗した方がいいのか、しない方がいいのか、それが問題だ。


16 なんだかんだ言っても、人間生まれる前は死んでたわけだからさ。


17 平和とは戦争がないことであり、必ずしも即幸福というわけではない。


18 歴史を変えるほどの力はないにしても、歴史に茶々を入れるぐらいなら出来ないこともないだろう。


19 人間何かを決断するときは、裏切られたり幻滅を味わうことになるかもしれないという覚悟が必要だ。


20 あなたがキライなのは、あなたの中のあなたがキライなあなたなのだ。


21 愛は裏切られるためにある。好意はあだで返されるためにある。その瞬間その瞬間でそうしたいと思ったのならば、それでいいのだ。(いきなり何を言ってるのでしょう)


22 金、金、金、金、金、金、金、金、金をくれ。お父さん、お父さん、金をくれ。(あれ、違うの紛れ込んじゃった)


23 男というのは戦う覚悟も必要だが、戦わない覚悟も必要なのだ。


24 オレは、やっぱり、ダメか。じっと手を見る。足をする。違う。


25 「X-ファイル」のテーマのコード→Am666と書くと良いかな? (書かないって!)(何の話なんだ)


26 彼は昔から背伸びばっかりして、今ではとうとう天国に首をつっこんでしまったとさ。


27 ある日の迷言:アメリカはアメリカであってアメリカでない。


28 ある返答:私は日本人だ。


29 ラブ・ミー・テンダー、何言っテンダー。


30 彼は描写の後ろでTVゲームをしている、とか言われるんだ、きっと。


31 もう何もかも終わったように思えても、それは一周目に過ぎないってんで、しれっと二周目、三周目を始めてもいいんだもんね。そういう認識もあるわけだ。


32 ひと花と言わず、もうふた花もみ花も咲かせてみてください。(なんて、オレが言ってる場合じゃない)


33 芸術に勝って、人生に負けた。(いや、勝ってない、勝ってない)


34 大人だったら憎らしい奴の命より金が欲しいよね。金、金、金。


35 今日の迷言:「フォークも恥ずかしいけどロックも恥ずかしいでしょ?」


36 明日の迷言:虚構を立てれば、現実が立たず。


            (第四回 おわり)

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