妹「私はお姉ちゃんのことが好き」[030-039]

030

姉(うーん、夜景見るために名古屋港に来たのは失敗だったかな)

妹「ぷっ、」

姉「?」

妹「あははっ、観覧車が消灯するところ見れるなんて逆にすごいよ!点く瞬間はたびたび見かけても、まさか消える瞬間なんてあるんだね!エコロジーだねー!でも消灯してもちゃんと飛行機除けの、ビルとかに着いてる赤い光は灯しておくんだね。面白いー!」


姉「ふふ」

妹「?」

姉「よかった。さっきから何か元気ないみたいだったからちょっと心配してた」

妹「……え?お姉ちゃんが、私を?」


031

姉「妹が元気なかったら、元気づけたくなるのが当然でしょ」

妹「そうなの……ってあれ、もしかして……それで港へ?」

姉「うん、テレビ塔で夜景が見られなかったのが気になってて。港だったらもしかしたらきれいな夜景が見られるかもって思ったから……」

姉「でも結局、観覧車も消灯しちゃうし、くるのが遅すぎたって感じかな」ハハハ

妹「……遅すぎた夜景、って感じだね」

姉「ふふ、それに対して暗くなる前に降りちゃったテレビ塔のは早すぎた夜景って感じか。似た者どうしで面白いね」


032

妹(私がお姉ちゃんのためにいろんなことをいっぱいしてあげたいと思ってた。お姉ちゃんが笑顔になればいいなって。でもこの港はお姉ちゃんが私のために選んでくれたんだ……)

妹(だけど、お姉ちゃんの言葉って……ひとつだけ…………)

妹(確かめないほうが幸せなのかもしれないけど…………私は!)

姉「じゃあそろそろ帰ろ…」

妹「ちょっと待って!橋渡ればもっと海沿いを歩けるみたいだよ。行ってみよ、お姉ちゃん」

姉「でも新幹線の時間がそろそろ危ないかも……」

妹「平気だよ!指定された時間じゃなくても自由席なら帰れるから!!」

姉「そう……?じゃあもうちょっとだけ歩いてみようか。せっかく来たんだし」


033

妹「静かな場所だね。誰もいなくて」テクテク

姉「そうだね」テクテク

妹(ここだったら……)

妹「お姉ちゃん、ひとつだけね、聞きたいことがあるんだけど」

姉「なに?」

妹「お姉ちゃんは、なんで私が元気ないときに、元気づけたいって思ったの?当然、だけじゃなくて、どうしてそう思ったのか知りたいな…………」

姉「それは……なんでかな、お姉ちゃんだから当然、じゃ、だめなの?妹はもっと私に甘えてくれてもいいんだよ??」

妹「あのね」


034


妹「私はお姉ちゃんのことが好き」



035

妹「家族だからとかじゃなくて、姉妹だからとかじゃなくて、その……恋しちゃったんだ。お姉ちゃんに」

妹「お姉ちゃんにできるであろう彼氏さんにずっと嫉妬とかしてたんだけどね。それだけじゃない。気づいたの。お姉ちゃんがテレビ塔で『また恋人と一緒にくればいい』って言ったときに。私はお姉ちゃんと一緒がいいのにって」

妹「私には彼氏なんていらない。お姉ちゃんさえいれば。いや、きっと何だって必要なものはないと思う。お姉ちゃんが私を妹だからとかじゃなくて、本当に、愛してくれれば」

妹「お姉ちゃんは…………私のことどう思ってる?」

姉「私は……」

妹「お姉ちゃんのためだったら、なんでもするよ。例えば……あのね、何でセーラー服の前ファスナーが減ってるか知ってる?簡単に脱ぐことができて、風紀的に良くないからなんだって。もしお姉ちゃんが、その、気持ちよく、ね、なりたいんだったら、私が……」ジジジ

姉「ちょ、ちょっとストップ!私はそんなことしてほしいと思ってない!」

妹「そ、そうだよね。私なんか、ただの妹だし」

姉「そういうことじゃなくて……あのねえ」


036


姉「私も、貴女のことが好き」



037

妹「……っ!でもそれは私が妹だからで」

姉「ううん、きっとそんな軽いもんじゃないと私は思ってるよ。だって妹にね、私で後悔してほしくない、って思ってるから」

妹「!?」

姉「私は貴女のことが好き。たまらなく好き。ほんとは食べちゃいたいくらい好き。でもね、本当に食べちゃったら……貴女は、もう何者にも戻れなくなっちゃう」

姉「ふふ、私にとってね、貴女は、まだ子供なの。一時の気の迷いを全てだって思い込んじゃうような。だけど本当はいろんな可能性があるんだってことをいっぱい学んでほしいと思う。そして一時の気の迷いじゃなくて全部を受け入れた上で本当に、本当に好きな人に自分を捧げるようにしてほしい、かな」

妹「お姉ちゃんだって高校生じゃん」

姉「ふふ、2年は大きいよ。貴女ほどかわいい女の子だったら、もっとね」

妹「じゃあ、私が高校卒業するくらいになったら、子供じゃなくてお姉ちゃんが信じてくれるくらい大人になったら……」

妹「私の告白、受けてくれる?」


038

姉(好きな人に自分を捧げるようにしてほしい、っていうのは本当のこと。でも今喋ったこと、結局は妹が暴走しすぎないようについた精一杯の理屈づけで言ったこと。)

姉(今の、そして未来、3年後の、10年後の、100年後の私は妹の愛してるって気持ちを受け入れられるのだろうか……)


姉(……担任の先生の優しさ、彼氏の大きな腕に抱かれるぬくもり、私が憧れて、好きで、恋して、愛おしくて、それ以外何もいらないって言えるくらい私が愛するだろう誰かは他にいるんじゃないかってね……?)


姉(……なんてね。もう結論はでてるくせに)


姉「私はお姉ちゃんだから。貴女が、貴女が好きになった誰かとの幸せに必要なものを奪ってはいけないと思う」

姉「髪も、胸も、手も、唇も。貴女をつくるほとんど全ては、きっと将来の誰かに捧げたいと思うところ。私の、私なんかのものにしちゃいけないところ」

姉「だから」サラッ


チュッ


姉「その人がきっと見ることのない……前髪でいつも隠してる、おでこ」

姉「今は妹の見えないところだけもらっていくね。約束の証に」


039

妹「//////」ポ-

姉「テレビ塔の夜景、『恋人と一緒に』って言ったこと、すごく気にしてたんだね。ごめん」

妹「ううん、お姉ちゃん……ありがとう。私のこと気遣ってくれて…………」

妹「私たち大学生になったら、今度こそ綺麗な夜景を見ようね!」

姉「早すぎた夜景、じゃなくてね」

妹「遅すぎた夜景、でもなくてね」

姉「ふふ」

妹「あははっ」



(終わり)


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