第2話 日常に少しの楽しみを
私の日常は淡々と終えていく。朝5時に起き、洗濯ものや掃除を終えてしまう。その間にコーヒーにココナッツオイルを入れゆっくりと飲み終える。朝のランニングを軽く済ました後、シャワーを浴び身支度を済ませ、朝のラッシュに向かう。
単調な事務仕事はもう何年も慣れた。後は仕事を終え、帰宅し、夜を迎える。これが雨であろうと基本的悪天候でない限り続く。デスクワークのため、基本出社はしなくても可能なため、月に一回私は一日自宅で仕事をこなす。その日だけ、私は一日外に出ることもないように食事の準備もお菓子なども用意を済ませ、誰にも見せることのない、よそ行きで服を整え、大きなヘッドホンで好きな音を聴き放題で仕事をする。
職場でする時も脳内は音楽が流れている。そのほうがスピードは上がるのだが、周りからの手伝いや突然の作業が来るため、思った程進まないことが多い。だからこそ私は唯一の楽しみをこの日にする。
会うこともない彼らの音を好きなだけ聞く。好きな曲を何度の飽きるほどリピートをかけて。ノルマとなる量を終えた頃には既にお昼のニュースだった。データを送信する。上司からお疲れ様のメールと共に退勤の許可が下りる。
「終わったぁ」
大きくデスクについたまま伸びをする。自分の好きに囲まれた時間はとても心地いいし、気分も良い。服をトーンダウンして誰でも着ているありふれた服に少し高値だったアンティークのネックレスを着ける。本を一冊鞄に入れて私は自分のアパートから一駅の街のお気に入りのカフェに行く。
個々のオーナーもアンティーク好きでコーヒーの種類も多い。めったに出ないものは一杯ずつの手挽き、ゆっくり可能な熱を与えないように挽くのだ。就職して単位制の資格を取るため、違う雰囲気で勉強するために、見つけたところだ。適度に人がいるが、干渉するわけでは無い。課題を片付けるには丁度よいことだった。
・・・・カラン
入り口のカウベルが鳴る。
「いらっしゃいませ。」
マスターは何もなかったかのように滑らかな言葉と共に新しいお客が座るまでを見届けていた。
チノパンにTシャツ少し古着のロングジャケットに眼鏡をかけている。どこにでもいそうな男性だ。ただ少し雰囲気が違うようにも感じたが気のせいに片付けた。無造作な髪形は無意識にこの人自身の何かを隠すかのようだ。
「何を。」
氷の入った水をサーブしマスターはオーダーを待った。
彼は一瞬私のほうを見て
「彼女と同じものを。」
何もなかったかのように無機質に返事をした。マスターは静かにコーヒー豆を引き出し、ドリップに時間をかけ始める、丁寧なその手作業は揺らぎの時間と共に香りがアロマのように香り出す。
ゆっくりと本のページが送られていく。
私の少しの楽しみが一つ増えたのだった。
君の中の僕に @mi-ro-ku-monnji
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