第8話 あかりの正体

中から、「どうぞ」の声がした・・・

あかりは、そそくさと、楽屋に入っていく・・・

僕にも一緒に入るように、目で合図する。


あかりの後から、追い目がちに入っていった・・・


「おじいちゃん、久しぶりだね」

「おお、あかりちゃん、元気にしとったか」

先程まで、とりを務めていた師匠がそこにいた・・・


大御所の落語家でも、孫はかわいいのか・・・

デレデレしている・・・


「いまどうしておる?」

「それがね・・・」

あかりは、これまでのいきさつを話しているようだ・・・


もっとも、フェイクも入っているようだ・・・

何割かは、わからんが・・・


しばらく2人で、話しているのだが、やがてこっちに来るように、あかりに合図される。


そして、おそるおそる、そばへと駆け寄った。


「はじめまして。楽丸です。孫がお世話になってるね」

「はじめまして。桜井良です。」

なんだか、こうしていると、普通の人と変わらない・・・


「あかりから、話は聞いてるよ。何だか迷惑かけてるみたいだね」

「いえ、そんなことはないです」

少しは迷惑だったが、口にはしないでおこう。


「あかりから、声を掛けられて、驚いたろう」

「はい」

「即答じゃの。まあ、正直でいいんだが・・・」

楽丸師匠は、大声で笑う・・・


だが、いきなり真剣な目になった・・・

「実は、良くん」

「はい、何でしょうか?師匠」

「じいちゃんでいいよ。」

「実は、あかりが良くんに声をかけたのは、わしのせいなんじゃよ」

「えっ」

師匠・・・じいちゃんの告白に驚いた・・・


「実は、わしもあかりも、君の事は知っていた」

「いつからですか?」


さすがにそれは、想定外だ・・・


「実は、君とあかりが一緒に暮らしておることは、

あかりの家族も、君の家族も知っておる」

まあ、それはそうだろう・・・知らないほうが、不思議だ・・・


でも、いつどこで、僕の事を知ったのかは、わからない・・・

僕は、有名人ではない・・・


「実はあかりが高校生というのは、ウソじゃ。実は君とタメ年だよ」

その言葉に、俺は耳を疑った・・・



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