第2話 ギャップ
僕は、家出少女を連れて、自宅のアパートへと帰った。
今更だが、ひとりぐらし・・・
アパートの住民とは、引っ越しの挨拶に行った時以外は、
顔を合わせていないので、面識はない・・・
家賃は振り込みなので、大家さんがどういう人なのかも知らない。
おそらく、このアパートにはいないだろう・・・
部屋の鍵を開けてドアを開ける。
「どうそ・・・なにもありませんが」
「ありがとうございます」
家出少女を招き入れる・・・
2LDK、少し贅沢かもしれない・・・
まず居間に家出少女を通す。
「適当にくつろいで・・・」
そういうと家出少女は会釈をして、正座をした・・・
お茶を家出少女の前に差しだす。
「ありがとうございます」
礼儀正しい子だな・・・それが印象だった・・・
自分の前にもお茶を置いて、向かい合わせに座る・・・
あまり自分から、人さまの事に首を突っ込むのは好きではないが、
事情が事情だけに、仕方ないだろう・・・
家出の理由の訊こうとした時、家出少女から話してきた。
「すいません・・・ご挨拶が遅れました。
私は、結城あかりと言います。17歳の女子高生。A型です。」
そこまでは、言いのだが・・・
「僕は、桜井良です。23歳社会人です。今年から・・・」
だめだ、お見合いになりかねない・・・
「良さんですね。よろしくお願いします。
あっ、私の事は、あかりでいいです。それと敬語はいいですからね」
「わかった。こっちも敬語はいいから・・・」
「ならお互い、タメ口ということで・・・」
妙に明るい。とても家出をするような子には、見えない・・・
その時、あかりが口を開いた。
「良さんは、私の家出の理由を知りたいよね。
わかった、お話するね」
「うん」
「実は・・・」
「実は・・・」
「家賃滞納で追いだされちゃって・・・」
「家賃滞納?」
僕は思わずお茶を噴き出した・・・
あかりは、下を出して、頭をかいている・・・
「ちょっとまて、親は出してくれないの?
20歳までは、親の責任だぞ」
「普通はそうなんだけどね・・・」
あかりは、人差し指を口に当てる。
「私、自分の都合でこの町に来たの」
「うん」
「学費は親が出してくれてるんだけど、生活費は自分でするっていったの?」
「それから・・・」
「自分で言いだした手前、今更出してくれとは言えなくて・・・」
力がぬける・・・
「友達の家を、転々をしてたんだけど、さすがに限界で・・・」
あかりは、続けた・・・
「生活費のために、バイトはしてたんだけど、全部パーになっちゃって・・・」
普通じゃないのか・・・この世界は・・・
「そんなわけで、しばらく泊めてね。良さん」
乗りかかった船、追いだせば、逆切れされかねない・・・
仕方ないので、空いている部屋に寝てもらうことにした・・・
「良さん、電話借りるね」
そういって、どこかに電話を掛けていた。
スマホは、そうか・・・
「どこへかけてたの」
「友達の家」
「お友達の?」
「うん」
「私の家具を、ここへ届けてもらおうと思って・・・」
深く追求するのは止めておいた。
とりあえず、今日はあかりには、僕の部屋で寝てもらい、
僕は雑魚寝することにした・・・
女の子を雑魚寝させられない・・・
今日は、大変だった・・・
なので気がつかなかったが、今、落ち着いて考えれば、
あかりの発言や行動は、おかしな点や矛盾が多い・・・
なので真剣に、(冷やかしであってほしい)
(ドッキリ出会ってほしい)と、願った・・・
だが、あかりの家出は、実はもっと深い物だった・・・
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