角度90度のふたり

勝利だギューちゃん

第1話 家出少女

人が好きではない・・・

人も僕が好きではない・・・


周りから、隔離さた状態・・・


しゃれた人はいう・・・

「奈良みたいな人だ・・・」


奈良・・・


海の無い内陸県・・・

海のない県は、全部で8つある・・・


他の7つは、他のどこかと隣接しているが、

奈良だけ、他の7つとは隣接している部分がない・・・


つまり、孤立・・・

そういう意味だ・・・


得にもならない事はしない・・・

損になる事もしない・・・


被害は最小限で抑えたい・・・


僕のような人間が、社会に適応出来るはずもなく、

だんだんと、隅っこに追いやれる・・・


そして、悪くしか言われない・・・


そんな毎日を送っていたのだが・・・


「こんにちは」

見知らぬ女の子に声をかけられた・・・


セールスか・・・勧誘か・・・それとも、いたずらか・・・

はたまた、風俗の呼びこみか・・・

どれも、いいものではないだろう・・・


もし道を尋ねるのなら、「すいません」と言うだろう。

なので、無視して通り過ぎようとした・・・


「あっ、待って下さい」

その声に振り向く・・・

「私ですか?」

一応社会人なので、一人称は男の僕でも、私が礼儀だろう・・・


「はい」

女の子は笑顔で答える。

「私に何か?」

何のために、僕に声をかけたのかが、不思議でならない・・・

いい意味ではなく、悪い意味で・・・


悪い事態ばかりが、頭の中をよぎる・・・


しばらくしてなのか、すぐだったのか、

その女の子は、口を開いた・・・


「泊めて下さい」

よく聞こえなかった・・・

「ワンスモア?」

訊き返す・・・

「ですので、泊めて下さい。何でもしますので・・・」

「ひやかしなら、止めてください。それとも、ドッキリですか?」

「違います。家出してきたんです。泊めて下さい」

女の子は、真剣な表情だった・・・


「何故・・・私に頼みます・・・」

「なぜ、私・・・いや、僕に頼みます?」

疑問だ・・・明らかにおかしい・・・


「だって、優しそうな人だから・・・」

何だか本当に困っているようだ・・・

この子を信用したわけではないが、まあ一晩くらいなら、いいだろう・・・


「わかりました・・・一晩だけなら・・・」

「ありがとうございます。お世話になります」

女の子は、頭を下げた・・・


(何かあれば、警察に突き出そう・・・冷たくされるだろうけど・・・)

その時は、そう思っていた・・・


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