第112話 二人の魔王を倒して世界は平和になった。めでたし、めでたし

 安藤は二人の魔王をあっさりと倒した。


 巨大な力を持つ魔王二人だったが、オール無限のステータスを持つ安藤には敵わなかった。 


 安藤に倒された二人は、

「別に、先輩ってやっぱりカッコ良い!なんて思ってませんから!」

「別に、剣を華麗に振る優斗素敵。だなんて思ってないよ」

 などと言っていたが、素直に負けを認めた。

 

「おい、そいつら生かしておくのかよ。危険じゃないのか?」

「また、人間に危害を加えるかも……」


 ハナビシとアイビーがそう言う。

「確かに、二人の言う事も分かる。だけど……」

 安藤は首を横に振った。


「俺は……この二人を殺す事は出来ない」


「先輩……」

「優斗……」

 安藤はハナビシに近寄る。

「二人は俺が見張る。そして、二度と悪さをさせないと誓う。だから、二人を許してやってくれないかな?」

 安藤がそう言うとハナビシは「ふにゃあ」と言って崩れ落ちそうになった。

「ま、まぁ……お前が責任を持つって言うのなら、いいけど……ごにょごにょ」

「うん。ありがとう。アイビーさんも良い?」

「は、はい!私は……アンドウ君の考えに……い、いえ。ハナビシさんの考えに賛同します!」

「ありがとう」

 安藤はニコリと微笑む。

「ホーリーさんはどう?」

「仕方ないですね」

 ホーリーは「ふう」とため息を吐いた。

「英雄であるユウト様がそう判断されたのなら、その意見を尊重しましょう」

「ホーリーさん……」

「勘違いしないでくださいね。流石、ユウト様。お優しい。などとは思っていませんから、ええ、一切思っていません」

「ありがとう」

 安藤の言葉にホーリーは金魚のように顔を紅くした。

 最後にクロバラに尋ねる。

「クロバラさんは?」

「アンドウがそう決めたのなら、良いと思うよ。私はアンドウ以外の人間に興味はないから。か、勘違いしないでね。アンドウが『静かで優しい愛』を持ってるから興味があるだけだからね」

「ありがとう」

 安藤はクロバラにも礼を言う。 


「では……」

 ホーリーがパンと手を叩いた。

「話もまとまった事ですし、これより帰還しましょう」

「うん」

 やっと終わった。安藤は安堵する。

「ああ、帰ろうか」

 ハナビシがポツリと言った。

 

「結婚式の準備もあるしな」


 この場に居る全員がハナビシを見た。

「あの、ハナビシさん。結婚式って?」

「はぁ、決まってるだろ。私とお前の結婚式だよ」

「ええっえええ?」

 安藤は口から心臓が飛び出たと思うぐらい驚いた。


「まぁ、私は別にお前となんて結婚したくないけど、お前はどうしても私と結婚したいみたいだから仕方なく……」


「ちょっと待って!」

 アイビーが待ったを掛ける。


「アンドウ君と結婚するのは私だよ!」


 この場に居る全員が今度はアイビーを見た。

「目を見れば分かるよ。アンドウ君。私と結婚したいって思ってるもん。べ、別に私はアンドウ君の事そこまで好きじゃないけど、アンドウ君がどうしてもって目で言うから……」

「あの、アイビーさ……」

「それは、おかしいね」

 吸血鬼、クロバラが口を挟む。


「アンドウがこの世で一番好きなのは私だよ。私は全然アンドウの事なんて好きじゃないけど、アンドウはどうしても私と結婚したいみたいだし、しょうがないから……」


「お待ちを」

 今度はホーリーが口を挟む。

「ユウト様は、私との結婚を望まれています。何度も私に愛している。と言っていましたから」

「言ってないよ?」

「心の中で言っていました。私には分かります」

 ホーリーはコホンと咳払いをする。


「というわけで、ユウト様と結婚するのは一番彼に愛されている私が……」


「いやいや、おかしいでしょ」

 菱谷が立ち上がる。

「先輩が結婚したいと望んでいるのは私。私は先輩との子供なんて欲しいとは全く思ってないけど、先輩がどうしても私と結婚して幸せな生活をしたいのなら仕方が……」

「妄想はそこまでだよ」

 最後に三島が口を開く。


「優斗が結婚したいのは、付き合いが一番長い私だよ。優斗は昔から私と結婚したいと言っていたからね」


「そ、そんな事言ってな……」

「何、優斗?」

「何でもありません」

 あまりの迫力に安藤は口をつぐんだ。


「ふざけんな。アンドウと結婚するのは私だ」

「私だよ!」

「いいえ、私です」

「私に決まっているよ」

「私だ!」

「私しかいないよ」

 六人の女性達が、バチバチと睨み合う。


「あの、皆……落ち着いて……」


「先輩!先輩は誰と結婚したいんですか?」

「えええっ!」 

 この状況、この世界に来る前と同じだ!

 あの時は菱谷と三島の二人だったが、今は四人も増えている。


「私と結婚したいよな。アンドウ!」

「私と結婚したいよね。アンドウ君!」

「私と結婚するよね。アンドウ」

「私と結婚したいですよね。ユウト様」

「私と結婚しますよね。先輩!」

「私と結婚するに決まってるよね。優斗」


 六人が安藤に詰め寄る。

「あ、あの……その……」

 安藤は悩む。此処で一人を選べば戦争になりそうだ。

 しかし、誰も選ばなくても争いが起こりそうだ。

 どちらを選んでも地獄。


(どうする?どうすれば良い?)

 安藤は必死に頭を振り絞る。


 そして、一つの答えにたどり着いた。


「全員だ!」


 安藤は皆に聞こえるように叫ぶ。 


「俺は、全員と結婚する!」


***


 その後、魔王を倒した安藤は国民からの絶大な支持を受け王になった。

 そして、六人の妻と三十人の子供に囲まれ、幸せに暮らしましたとさ。


 めでたし。めでたし。


 妻と子供達に囲まれた安藤は呟く。

「……何これ?」


「アンドウ」


 どこからともなく声が聞こえた。


「どうだったアンドウ?」

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