第107話 滅茶苦茶硬いゴーレムをあっさりバラバラにする

 ニケラディア鉱山。

 此処では『ミスリル』という様々な用途に使える貴重な金属が採掘されている。

 この場所には、世界中から多くの人間が一攫千金を目当てにやって来る。


 安藤とホーリーは、そのニケラディア鉱山を歩いていた。


 ズシン。

「わぁ、なんだ?」

 突然地鳴りがした。ズシン、ズシンという激しい音が、どんどん近づいてくる。


「グオオオオオオオオオオ!」

 安藤とホーリーの前に二十メートルを超える魔物が現れた。


「ホ、ホーリーさん。あれは何ですか?」

「あれはオリハルコン・ゴーレムです」

「オリハルコン・ゴーレム!?」

「はい。読んで字のごとく、オリハルコンでできているゴーレムですね」


 魔物にはランクがある。

 最も弱い魔物はFランク。最も強い魔物はSSSランク。


 ゴーレムの種類は、通常の『ゴーレム』に加え、『カッパー・ゴーレム』、『シルバー・ゴーレム』、『ゴールド・ゴーレム』等、多岐に渡る。


 通常のゴーレムのランクは『B』。

 だが、目の前にいる『オリハルコン・ゴーレム』のランクは『S』だ。


「ちなみに、先程のブルー・ドラゴンのランクはAです」

「じゃ、じゃあ。あのドラゴンよりも強いんですか?」

「そうなりますね。ちなみに、オリハルコンは世界一硬い金属です」

 

『オリハルコンはオリハルコンでしか壊せない』


 そんな言葉がある。


 オリハルコンは鉄の何十倍も壊れにくく、あらゆる薬品に侵されない。

 さらに、オリハルコンは金属の中でも特に魔法耐性に優れているため、魔法をほとんど受け付けない。

 そのあまりの頑丈さに昔は『オリハルコンはオリハルコンでしか壊せない』と言われていた程だ。現在でもオリハルコンを加工するには、別のオリハルコンを使うことがほとんどだ。


 そのため、オリハルコンの価値は非常に高く。金属の中で最も高額で取引されている。


「じゃ、じゃあ斬れないじゃないですか!」

「大丈夫です。ユウト様なら」

 ホーリーはニコリと笑った後、ハッとなった。


「別にユウト様を信じているわけではありません。ええ、ありませんとも」


 ホーリーは苺のように顔を紅くしてプイッと横を向く。

「グオオオ!」

「わぁ!来た!」


 巨体に似合わぬスピードでオリハルコン・ゴーレムが迫ってくる。

 まるで「生まれてから今まで彼女が居ない自分の前でイチャつくとは、いい度胸だな!」と言っているかのようだ。

 オリハルコン・ゴーレムは腕を大きく上げると、勢いよく安藤に向かって振り下ろした。


「わあああ……って、あれ?」

 痛くない。オリハルコン・ゴーレムの一撃は確実に安藤に命中した。

 しかし、安藤はノーダメージだ。

 荒くれ者達に攻撃されても何も感じなかった時と同じだ。

「グオオオオ!」

 反対に、オリハルコン・ゴーレムは痛そうに手をブンブン振っている。良く見ると拳の一部が欠けていた。

 オリハルコンが欠けたという事は、安藤はオリハルコンよりも硬いと言う事になる。

「グル、グアアア!」

 怒ったオリハルコン・ゴーレムは、安藤を蹴ろうとする。

「うあああああああああ!」


 ブルー・ドラゴンの時のように、安藤はまたもや剣を出鱈目に振る。

 凄まじい斬撃がオリハルコン・ゴーレムに向かって飛んだ。


「グガアアアアアアアア!」

 オリハルコン・ゴーレムの体はバラバラとなり数万の破片となった。 


「ええ?」

「見事な斬撃でしたね。別に見惚れてはいませんが。ええ、見惚れてなどいません」

 言葉とは逆に、ホーリーはパチパチと拍手をくれた。


「これで路銀には困りませんね」

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