第106話 適当に剣を振ったら、ドラゴン倒しちゃいました
ホーリー曰く、今この世界には二体の魔王が現れ人間達を支配しているらしい。
その二匹の魔王を倒すために安藤は呼ばれたのだと言う。
見事、伝説の剣を抜いた安藤はなんやかんやあり、二体の魔王を倒すための冒険に出るのだった。
「あの……ホーリーさん」
「はい」
「俺が二体の魔王を倒すために召喚されたと言うのは分かりました。それは分かったんですが……」
「何でしょう?」
「どうして、ホーリーさんまで付いて来るんですか?」
ホーリーには『聖女』としての仕事があるはず。自分と一緒に居て良いのだろうか?と安藤は思う。
「貴方を此処に召喚した以上、貴方だけを戦わせるわけにはいきませんから」
「そうですか……あ、ありがとうございます」
「いえ」
「あの……それで……」
「まだ何か?」
「どうして、こんなに近くで歩くんですか?」
ホーリーは安藤にピタリと寄り添うように歩いている。
恥ずかしいし、歩きにくい。
「別にユウト様の傍に居たいとか、ユウト様の匂いを嗅ごうだなんて思っていません。ええ、思っていませんとも」
「そ、そうですか……」
「別にユウト様素敵とか、ユウト様に触れられて幸せ!とか、そんな事も思っていませんよ。ええ、決して思っていません」
「……そうですか」
「スーハ―」
「今、匂い嗅ぎませんでした!?」
「そんな事はしていません」
ホーリーは真顔で否定する。
「グルルルル!」
突然、安藤とホーリーの前に巨大な魔物が現れた。
「うわっ!な、なんだ?」
「これは……ブルー・ドラゴンですね。口から出す酸は『この世界で最も強い酸』と呼ばれています」
「グガアアアア」
ブルー・ドラゴンは、明らかに安藤とホーリーを獲物として見ている。
「に、逃げましょう!」
「大丈夫です。ユウト様なら倒せます」
「いや、無理ですってこんなの!」
「ググウグググ!」
ブルー・ドラゴンは大きく口を開け、酸を吐き出した。
「危ない!」
安藤は咄嗟にホーリーを庇った。二人とも地面に倒れる。
「大丈夫ですか?ホーリーさん!」
「……」
「ホーリーさん?」
「今の攻撃でしたら防御魔法で防げました。無用な行動でしたね」
「すみません。思わず……あの、本当に大丈夫ですか?」
「……何がですか?」
「いえ、顔が真っ赤ですので」
「……別にユウト様優しい。とか、ユウト様最高です。とか、どうせ押し倒すのでしたらベッドに押し倒して欲しいですとか、そんな事思っていません。ええ思っていません」
「は、はぁ……」
「そろそろ、退いて頂いてもよろしいですか?」
「あっ、すみません!」
安藤は慌ててホーリーの上から退いた。
耳まで真っ赤にしながらホーリーは立ち上がる。
「グルルルルアアアアア!」
ブルー・ドラゴンは怒り心頭の様子だ。
まるで「イチャイチャすんな、てめぇら!」とでも言っているようだった。
「さて、ユウト様。その剣であのブルー・ドラゴンを倒してください」
「そんな、無茶で……」
「大丈夫です。ユウト様なら出来ます」
「グゴオオオオ!」
ブルー・ドラゴンは口を大きく開け、また酸を吐いた。
「う、うわあああ!」
安藤は持っていた剣を破れかぶれに振り回す。
すると剣から凄まじい斬撃が飛んだ。
斬撃はブルー・ドラゴンが吐いた酸を消し飛ばし、そのままブルー・ドラゴンを真っ二つにした。
「グル?」
ブルー・ドラゴンは何が起きたのか分からない。といった表情で倒れる。
安藤は何度も真っ二つになったブルー・ドラゴンと自分の持っている剣を見た。
「お、俺……」
「見事な斬撃でしたね。別に見惚れてはいませんけど。ええ、見惚れてなどいません」
言葉とは逆に、ホーリーはパチパチと拍手をくれた。
「今夜はご馳走ですね」
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