第70話 ブラッディ・ウエディング⑰

 時は少しだけ、巻き戻る。


 巨大な蛇に、三島が締め上げられた。


「由香里!!!」

 安藤は自分を抱きしめるホーリーを振り払い、三島に向かって走り出そうとした。

 彼女を助けるために。

 先程まで、感じていた恐怖は消えていた。

 今の安藤には『由香里を助けなければ!』という想いしかない。


「『スリープ』」

 突然、激しい眠気が安藤を襲った。

 ホーリーが安藤に『睡眠魔法』を掛けたのだ。


「……ホーリーさ……ん」

「お休みなさい。ユウト様。しばらくの間眠っていてください。大丈夫です。ユウト様が目を覚まされる頃には、全てが終わっていますから」


 安藤は目を閉じ、静かに寝息を立て始める。


***


「……んっ?……んんっ?」


 目を開けた安藤は、思わず辺りを見渡した。


「此処は……どこだ?」

 気付けば安藤は、暗闇の中に居た。

 周りには何もない。三島とホーリーの姿も消えている。

 混乱しながらも、安藤は大声で叫んだ。 

「由香里!ホーリーさん!」

 三島とホーリーの名前を呼ぶが、返事はない。

「くそっ!」

 安藤は、焦る。


 今日は、安藤とホーリーの結婚式だ。その最中、ホーリーが頭を魔法で撃たれた。


 ホーリーを撃ったのは、三島由香里。

 安藤には分かる。他人の姿をしていたが、あれは間違いなく、三島だった。


 その後、信じられないことに、ホーリーは蘇った。

 そして、三島が突如として現れた巨大な蛇に縛り上げられた。安藤は三島を助けようとしたが、その前にホーリーによって眠らされてしまう。


 安藤が記憶しているのは、そこまでだ。


「あれから、どうなったんだ?由香里は?ホーリーさんは?此処は……どこなんだ!?」。


「此処は、夢の中だよ」


 いきなり、背後から声を掛けられた。安藤は慌てて後ろを振り返る。

「此処は、貴方の夢の中だよ」

 いつの間にか、そこに一人の少女が居た。

 周囲は闇に包まれているのに、少女の姿は、ハッキリと見える。


 少女は、胸元が開いた黒い服を着ており、頭にはヤギのような角が二本生えている。

 背中には、まるで蝙蝠のような黒く大きな羽が生えていた。


 明らかに、人間ではない。 


「ま、魔物!」

 安藤は、思わず一歩後ろに下がった。

「待って!」

 逃げようとする安藤に、魔物の少女は叫んだ。

 安藤は、思わず動きを止める。

(人語を話せる魔物!)

 この世界に来てから、何度か魔物を見てきた安藤だったが、人の言葉を話せる魔物を見たのは、これが初めてだった。

「大丈夫。怖がらないで。貴方を傷付けるつもりは無いから」

 魔物の少女は、祈るように両手を組む。その仕草は、まるで人間そのものだ。


「お願い、私の話を聞いて」


 魔物の少女は、まっすぐ安藤を見つめる。安藤は慎重に口を開いた。

「……此処が俺の夢の中というのは、本当ですか?」

 魔物の少女は頷く。


「そうだよ。此処は、貴方の夢の中。私は貴方の夢の中にお邪魔させてもらっているの。現実の貴方は、今眠っている」


「―――それなら!」

 安藤は自分の顔に触れた。しかし、目を覚まさない。

 今度は、自分の頬を叩いてみる。だが、やはり目は覚めない。

「どうすれば、目を覚ますことが出来ますか?俺は直ぐに現実に戻らないといけないんです!」

「私の話を聞いてくれたら、現実の世界に帰してあげる」

「……っ」


(どうする?)

 人語を話せるからといって、向こうが必ずしも人間に対して友好的であるとは限らない。

 人語を話せる魔物の中には、人間を騙し、捕食する種類が居ることを安藤は知っていた。


 この魔物の話を聞くべきか?それとも……。


「……分かりました。お話を伺います」

 悩んだ末、安藤は魔物の少女の話を聞くことにした。どの道、自力で目を覚ますことが出来ない以上、少女の話を聞くしかない。

「俺に……何の用ですか?」

 魔物の少女は答える。


「私を助けて欲しいの」


「……助ける?」

 安藤は、首を傾げた。

「何か、あったんですか?」

 

「今、此処にいる私は本体ではないの。私の本体は今、に閉じ込められている》」


 安藤は目を大きく見開いた。

「協会が?一体、どうして?」

「目的は、貴方だよ」

「俺?」


「私を閉じ込めたのは、『協会の聖女』だよ。名前は、ホーリー・ニグセイヤ」


「―――ッ!」

 魔物の少女の口から出たその名前に、安藤は息を飲む。

「ホーリーさんが!?なんで?」

「貴方、アンドウ・ユウトだよね?」

「そ、そうですけど……俺の事を知っているんですか?」

「うん」

 魔物の少女は頷くと、ハッキリこう言った。


「ホーリー・ニグセイヤが私を捕まえたのは、貴方を手に入れるためなの」


***


 安藤は、魔物の少女に問う。

「……どういうことですか?ホーリーさんが俺を手に入れるために貴方を捕まえたって」


「私はね……『夢魔』なの」


「……夢魔」

「まぁ、人間は私みたいな女の夢魔の事を『サキュバス』。男の夢魔を『インキュバス』って呼ぶけど」


『夢魔』―――『サキュバス』。

 確か、人間の夢の中で相手を誘惑し、精気を吸い取る魔物だ。

 前に読んだ魔物の本に書いてあった。


「『聖女』が、私を閉じ込めているのは、『サキュバスのキャンドル』を作るためなんだ」


「『サキュバスのキャンドル』?」

「強力な催淫効果を持つキャンドルだよ。自分と好きな相手の肉体の一部を入れ、魔力を注ぎ、火を点ける。キャンドルから漂う香りを嗅いだ相手は、キャンドルに魔力を注いだ人間を激しく求めるようになるんだ」


『聖女』はそのキャンドルを使


「―――ッ!」

「人間が『サキュバスのキャンドル』の効果に抗うには、魔法で防御するしかない。魔法が使えない人間が『サキュバスのキャンドル』に抗う事は、まず不可能だ。どんなに意志が固い人間でもね」


 安藤は思い出す。

 そういえば、一緒に宿に泊まった時も『冒険者カウンセリング診療所』にやって来た時も、ホーリーはキャンドルを使っていた。

 そして、ホーリーが使ったキャンドルの香りを嗅いだ後、安藤は自分でも信じられない程の欲望をホーリーに抱いた。

(まさか、あのキャンドルが?)

 そう思った時、安藤はある考えに思い至った。


(もしかして、『サキュバスのキャンドル』って……)

 安藤は尋ねる。

「『サキュバスのキャンドル』って、どうやって作られるんですか?」


「サキュバスの血肉から作られるんだよ」


 あっさりと少女は答える。

「『サキュバスのキャンドル』はね……サキュバスの血肉で作られている。『聖女』は私から抜き取った血と、私から削ぎ落した肉を使って『サキュバスのキャンドル』を作ったんだ」


「―――ッ!そんな……」

 あまりにも衝撃的な話に、安藤はよろめいた。

「まさか……ホーリーさんがそんな事を……?」


「『聖女』は、貴方を手に入れた後も、もっとたくさんの『サキュバスのキャンドル』を作るために、私を監禁し続けている。このままじゃ、私は死ぬまで、血と肉を取られ続ける家畜として生きることになる」


「……ッ」

 動揺する安藤に、少女は言う。

「助けて……」

 暗闇の中、少女が助けを求める。

『お願い……私を助けて……お願い!』

 少女は涙を流しながら、安藤に助けを求める。


「私を閉じ込めている檻は特殊で、自力では抜け出すことが出来ない。私が逃げるためには、どうしても貴方の協力が必要なの」

 そう言うと、少女は、安藤の頬を両手で挟んだ。そして、自分の唇を安藤の唇に重ねる。

「んっ!?」

 数秒後、サキュバスの少女は安藤の唇からゆっくりと自分の唇を離した。

「な、何をするんですか?」

 サキュバスの少女は自分の唇を指でなぞる。

「今、私の魔力を貴方に注ぎ込んだ。これで、私と貴方は繋がった」

 少女の胸が光る。安藤の胸も同じように輝きだした。


「後は、現実の世界に戻った時、貴方が私の名前を呼んでくれれば、私は貴方の傍にテレポートすることが出来る。そうすれば、私は檻の中から抜け出せる!」


 少女は安藤の手を握る。

「お願い、協力して」

「お、俺は……」

「勿論、タダで助けてくれとは言わない。私を助けてくるのなら……最高の快楽を貴方に上げる!」


 少女は安藤に、取引を持ち掛ける。

 暗闇に包まれていた周囲が明るくなった。

 

 気が付くと、大勢の女性が安藤を取り囲んでいた。


 髪型、体型、服装、身長、年齢。異なる姿をした女性達が安藤を見つめ、微笑んでいる。

 女性達は微笑みを浮かべながら安藤に近づく。そして、安藤の体を触り始めた。

「―――ッ!や、やめ……」


「好きな女を選んで。選んだ女と好きなことをさせてあげる」

 サキュバスの少女は、ニコリと笑う。

「一人だけ選んでも良いし、複数選んでも良い。なんなら全員選んでも良いんだよ?安心して。精気を吸い取る気はないから。これは、報酬の前払い」


「くっ……ううっ」

 女性達は、尚も安藤の体を触り続ける。夢の中なのに、体に触れられる感触をはっきりと感じる。

「私が居る夢の中では、現実と同じように快楽を感じることが出来るの」

 サキュバスの少女は、甘く囁く。

「起きている間では体験出来ない快楽を味合わせてあげる」

「や、やめ……」

「さぁ、快楽に身を委ねて……」

 安藤の体を触っていた女性の一人が、安藤を抱きしめる。そして、目を閉じ、安藤にキスをした。


「やめてくれ!」


 安藤はその女性を突き飛ばすと、女性達の囲みから抜け出し、叫んだ。

「もう、やめてくれ!俺は、こんなこと望んでいない!」

 サキュバスの少女は、目を丸くして驚く。

「どうして?好みの女が居なかった?なら、どんな女が良いか言って。貴方の望みの女を出して上げ……」

「そうじゃない!」

 安藤は、ハッキリと告げる。


「俺は……君を助けることは出来ない」


 安藤の言葉にサキュバスの少女は、顔を大きく歪めた。

「―――ッ!どうして!?」

「俺には、君が言っていることが本当だとは思えない。ホーリーさんがそんな酷いことをするなんて……俺には、到底信じられない」

 安藤は、頭を横に振る。


「俺は、ホーリーさんとそんなに長い間一緒に居る訳じゃない。でも、今、初めて会ったばかりの君と、ホーリーさんのどちらかを信じなければならないのなら……俺はホーリーさんを信じる」


「……そんな……私は嘘なんか付いてない!」

 サキュバスの少女は叫ぶ。

「貴方も見たでしょう?『聖女』が『サキュバスのキャンドル』を使うところを!」

「確かに、ホーリーさんがキャンドルを使うところは見た。だけど、あのキャンドルが本当に君の言う、『サキュバスのキャンドル』なのかは分からない」

「―――ッ」

 ホーリーが用意したキャンドルの香りを嗅いだ後、安藤がホーリーに激しく欲望を抱いたのは間違いない。

 だが、それだけではホーリーが持っていたキャンドルが、『サキュバスのキャンドル』だとは言えない。

 と、安藤は思う。


「それに……君を逃がしてしまえば、多くの人達に危害が及ぶかもしれない。それは……それだけは絶対にダメだ」

 

 サキュバスの少女が言っていることを信じられないと、口では言ったものの、安藤の中には、『もしかしたら、このサキュバスの少女が言っている事は、本当かもしれない』という気持ちも僅かに存在する。

 だが、安藤はサキュバスという魔物のことを良く知らない。

 知っているのは、『夢魔』は人間の夢の中に侵入して、精気を奪う魔物であるという事だけ。

 それ以外については、何も知らない。


 もし、サキュバスの言葉を信じ、言われるがまま逃がしてしまえば、このサキュバスは、多くの人々を危険に晒すかもしれない。

 その可能性がある以上、安易にサキュバスを助けることは出来ない。


「分かった。仕方ないね……」

 サキュバスの少女は、悲しそうに顔を伏せる。

「しょうがないよ。会ったばかりの魔物と親しい人間となら、人間の方を選ぶに決まっているものね」

「ごめん」

「謝らなくていいよ。だって……」

 突然、サキュバスの少女は安藤に顔を寄せた。


「今から私、貴方に酷いことをするから」


 サキュバスの蒼い目が紅く染まる。その紅い目で、サキュバスは安藤の目をじっと覗き込む。

「なっ、何を!?」


「取引に応じてくれないのなら、仕方ない。貴方を私の虜にして、従わせる」


 安藤の顔が紅く染まる。心臓の鼓動は早くなり、頭がぼうとする。

 まるで恋に落ちたかのように。

 サキュバスは安藤の目を覗き込みながら、囁く。


「貴方が一番愛しているのは……誰?」


「……君だ」


 安藤は顔を紅くしながら答える。

「俺が愛しているのは……君だけだよ」


 安藤の答えに、サキュバスは満足そうに笑った。

「私は異性を魅了する『誘惑の魔法』を使う事が出来る。これで、君は私の虜だよ」


「うん……俺は……貴方を愛して……いる」

 サキュバスは、クスリと笑う。

「アンドウ。私を助けてくれる?」

「当たり前だよ」

 サキュバスの問いに安藤は即答する。

「俺は……必ず君を助ける」

「ありがとう。アンドウ」

 サキュバスは、安藤を抱きしめた。

「でもね。一つだけ問題があるの」

「……何?」


「貴方は、目を覚ますと私の事を忘れてしまうの。私が貴方に掛けている『誘惑の魔法』も、貴方が私の事を忘れてしまっている間は、効果が無くなってしまう」


「えっ!」

 安藤は、目を大きく見開く。

「そんな!嫌だよ!君を忘れてしまうなんて!」

「大丈夫。心配しないで」

 うろたえる安藤に、サキュバスは優しく微笑む。

「目を覚ましたら、自分の『手のひら』を見て」

「手のひらを?」


「貴方が目を覚ましたら、此処であった事は忘れてしまう。だから、貴方の手に印を付けておく」

 サキュバスは、安藤の手のひらを指でなぞった。

「貴方が自分の手のひらを見たら、此処での事を思い出せるようにしておいた。お願い。きっと、私の事を思い出して。そして―――」

 サキュバスは、安藤の手をギュッと握る。


「必ず、私を呼んで」


 サキュバスの少女は、真剣な目で安藤を見る。

 

「ああっ、分かった。必ず、君を呼ぶよ」

 安藤は、力強く頷いた。

「ありがとう」

 よっぽど嬉しいのだろう。サキュバスの少女は目に涙を浮かべている。


 あっ、と安藤は声を上げた。

「そういえば、まだ貴方の名前を訊いていなかった」

 安藤は、サキュバスの少女に尋ねた。

「貴方の名前は?」

 サキュバスの少女は答える。


「私の名前は、リーム」

 

 サキュバスの少女は、目に涙を浮かべながら、安藤に自分の名前を告げた。


「リーム・メキセイ・ムメイ。それが私の名前だよ」


「リーム……綺麗な名前だ」

 安藤はリームを抱きしめる。

「リーム。俺の愛しい人。待っていて、必ず君を助けるから!」

「うん。待ってる」


 その瞬間、全てが光に包まれ、消えた。


***


「うっ……ううん……」


 安藤はゆっくりと目を覚ます。

 眠っている間、安藤は夢を見ていた。その夢には一人の少女が出て来た。


(あれ?あの女の子は……誰だ?俺は、今まで何の夢を見ていたんだっけ?)


 安藤が夢の内容を思い出していると、急に背後から誰かに抱きしめられた。柔らかい感触が背中に伝わる。


 抱きしめる二本の腕からは『決して安藤を逃がさない』という強い執着が感じられた。


 安藤は顔を上げる。三島とホーリーが驚いた表情で、こちらを見ていた。

 特に三島は、まるで幽霊でも見たような表情をしている。


「由香里……ホーリーさん……?」

 安藤は、疑問に思う。

 三島でもホーリーでもないのなら、今、背後から自分を抱きしめている人間は、一体誰なのか?


 安藤を背後から抱きしめている人物は、そっと安藤の耳に唇を寄せ、甘い声で囁いた。


「会いたかったです。先輩」


***


 そして時は、現在に戻る。


 安藤は穏やかな目でサキュバス……『リーム』を見ている。

「俺は、今まで貴方の事を忘れていた。でも、思い出せた。さっき


 菱谷、三島、ホーリーの誰を選ぶべきか悩み、頭を手で押さえた時、安藤は自分の『手のひら』を見た。


「俺が自分の手のひらを見たら、思い出せるように、貴方が魔法を掛けてくれていたおかげだよ」

 安藤は、ニコリとサキュバスに微笑んだ。


「貴方の魔法のおかげで俺は、さっき『夢の中で』貴方に出会ったことを思い出せたんだ」


 安藤は自分の手のひらを見た。安藤の手のひらには文字が書いてある。この文字が『リーム』のことを思い出すトリガーとなった。


 安藤の言葉を聞いたホーリーは、目を大きくする。

「『夢の中で』貴方に出会った」安藤は確かにそう言った。


 その時、ホーリーは、自分が大きなミスを犯したことに気付いた。


 協会本部に入った事すらない安藤が、協会本部の地下にずっと閉じ込められていたサキュバスと接触するのは不可能だ。


『夢魔』であるサキュバスは夢の中に侵入する魔物。サキュバスが安藤と接触するのなら、『夢の中』しかない。


 では、いつ、サキュバスは安藤の夢の中に侵入したのか?


 厳重に封印されているサキュバスが、遠くで寝ている安藤の夢の中に侵入することは出来ない。

 自宅で寝ている安藤の夢の中には入れないはずだ。


 サキュバスが安藤の夢の中に侵入するには、


 その機会が一度だけあった。


 それは、ホーリーが三島を―――正確に言えば、三島由香里の記憶を植え付けられたミケルドを―――『魔法蛇』で捕えた時のことだ。

『魔法蛇』に捕らわれた三島を助けようとする安藤を、ホーリーは魔法で眠らせた。

 それは、安藤を止めるためと、自分がこれから三島を殺す所を安藤に見せないためだった。


 まさにあの時、サキュバスは『安藤の夢の中に侵入した』のだ。


 この結婚式場は、

 サキュバスが安藤の夢の中に侵入することが出来たのは、あの時しかない。


 サキュバスが安藤の夢に侵入することが出来たのは、『自分が安藤を眠らせてしまったから』だ。と、ホーリーは気付いた。


 リームは、安藤の耳元に囁く。

「さぁ、行こうアンドウ」

「どこに行くの?リーム」。


「私の故郷だよ」


 リームは安藤を強く抱きしめる。

「アンドウ、私と一緒に来てくれる?」

「勿論だよ。リーム」

 安藤は迷いなく答えた。


「君の行く所なら、俺はどこにでも行くよ」

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