第51話 番外編 ー8月9日(ハグの日)ー
今日は、8月9日で(ハグの日)らしいのでショートストーリーを書いてみました。
Twitterにも載せてたものに加筆しています。
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ハグの日~安藤と菱谷の場合~
「先輩、『私を抱きしめてください』」
「や、やめろ!」
体が勝手に動く。己の意志に反して、安藤の両腕は菱谷の体を強く抱きしめた。
「い、嫌だ。菱谷、やめろ!」
安藤は菱谷を抱きしめる自分の腕を、何とか離そうとした。
しかし、安藤の腕は全く動かず、菱谷の体を抱きしめ続ける。
「くっ、くそ!動け、動け!」
「クスッ。照れてる先輩、とても可愛いです!」
「ち、違う!俺は、そんな事……」
「先輩」
微笑みを浮かべながら、菱谷も安藤の体を静かに抱きしめた。
「やめろ!離せ、離せよ!」
「愛しています。先輩」
苦悶の表情を浮かべながら抵抗する安藤に、菱谷は嬉しそうに微笑む。
「ああっ、先輩。私はとても幸せです」
***
ハグの日~安藤と三島の場合~
「優斗、私を抱きしめて」
「…えっ」
「ほら、早く!」
笑顔で両手を広げる三島。そんな三島を安藤は顔を紅くしながら、抱きしめた。
「痛くない?」
「大丈夫」
三島も安藤を抱きしめ返す。安藤と同じ、相手が痛がらない強さで。
「温かい」
「俺も」
「幸せ」
「俺もだ」
「そろそろ、夕食だね」
「うん」
「でも、離れたくないなぁ」
「俺も……離れたくない」
安藤と三島は、お互いの温もりを感じ合いながら目を閉じる。
腹は空いたが、幸せだ。と安藤は思った。
二人はしばらくの間、夕食を食べるのも忘れ、そのままお互いを優しく抱きしめ合った。
「優斗。私はとても幸せだよ」
***
ハグの日~安藤とホーリーの場合~
「ユウト様、私を抱きしめてください」
「で、出来ません!」
「ユウト様は私を抱きしめるべきです。何故なら~」
五分後。安藤はホーリーを抱きしめることにした。
自分は、ホーリーを抱きしめなければならない。ホーリーの話を聞いた安藤は、そう思った。
「じゃあ……」
安藤はホーリーを優しく抱きしめた。
「だ、大丈夫ですか?痛くありませんか?」
「はい、大丈夫です。ユウト様は優しいですね」
ホーリーは微笑みながら、そっと安藤を抱きしめ返す。
「人は、自分が愛している相手に抱きしめられると、体に様々な良い効果を得られるそうです。まるで、魔法のようですね」
「……そ、そうですか」
「ドクン、ドクン」
「―――?」
「ユウト様の心臓の音が聞こえます」
「―――ッ!」
「緊張されているのですね」
ホーリーはクスリと笑う。
「私も心臓がドクン、ドクンと高鳴っています。体が熱く、全身に喜びを感じています。これも、愛する人に抱きしめられることによって得られる効果ですね」
ホーリーは、ほんの少しだけ安藤を抱きしめる力を強めた。
「ユウト様、私は幸せです」
***
愛する相手と抱きしめ合いながら、三人の少女達は奇しくも同じことを思う。
『絶対に、この人を誰にも渡さない』
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