第15部 境無き王国

【第15部 ~プロローグ~ 】


 鋼の闘士サーストンの宣戦布告。命無き滅びの大地・フレスキア平原にて待つ。

 彼が望んでいるのはこの世界の消滅でも支配でも何でもない。彼は世界の行く末がどうなろうと知った事ではない。

鋼の闘士としての義務を果たすと口にしていながらも無関心であった。


 彼はただ強き者を望んでこのクロヌスを彷徨っていた。魔族界と魔法世界、二つの世界の次元を超え、戦士として強き者を探していた。

 その生の先、彼は一人の強者と出会った。その人物こそが魔法世界クロヌスを救済し、全ての幹部を討滅し、魔王の封印にも成功した英雄・精霊皇アルスマグナ。

 ただ一人、彼の生きた道の中で唯一ついた敗北の痕跡。貫かれることもなければ切り裂かれることもない。焼きただれることも溶かされることも。

その身に傷をつけた者は誰一人としていなかったその体に傷をつけた。

 

 彼はその人物との戦いを望んでいる。しかしアルスマグナ既にこの世にはいない。全ての力を人間に託し、この数千年の歴史から退場したのだ。

 サーストンは少年の事を認めてはいなかった。しかし、彼は片鱗を見た。精霊皇の器・ラチェットにかつてのアルスマグナの面影を見た。


 故に彼は切に願う。

 一対一の戦い。誰にも介入を許さぬ死闘を。


 それを避けるものならば……世界を滅ぼすと宣告してみせたのだ。

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