PAGE.349「救世の光(その2)」
見覚えのある戦士が次々と現れる。
ソージ達のいた地点に振ってきた騎士はホウセンであることを一同は理解する。そして、あのファイアボールを発動した騎士は礼儀無頼なサイネリアであるのも間違いない。
空で戦っているあの少女達。見覚えのあるマジックアイテムの大剣を振り回す少女、そして父親であったエージェントの能力をそのまま扱ってみせている少女。
クロとルノア。遠めでも、あの二人はそうではないかと心を震わせる。懐かしい面々が次々と彼女達の窮地へ現れる。
「おいおい……貧乏くじは私に回されたか」
ドラゴンから騎士サイネリアが飛び降りる。
放ったファイアボールは竜騎士を仕留めることは出来ても……ブレロは突破することは叶わなかった。
「なら、直接いたぶってやる!」
彼女の馬鹿力は魔力だけではなく、当然腕力にも自信がある。あれだけの空から降ってくるのだ。反動を利用すればとんでもない威力で剣がブレロの顔面に叩き込まれる。
「やらせるかっ!」
しかし、兄のガンダラは当然、それを見逃さない。
素早い動き。ほんの一瞬の判断力で、空から降ってくるサイネリアへと飛び掛かっていく。確実に“弱点”を狙ってやってくる騎士の動きを鈍らせるためだ。
ガンダラとサイネリアが見合う。
騎士と魔族が、今、交わろうとしている。
「やれ」
「おうヨ」
サイネリアの指示。
同時、近くにまでせまっていた“一体のドラゴン”から何者かが飛び降りる。黒いフード付きローブを羽織った、白髪の青年。
チラリと見えるのは……“左目と一体化した特徴的な仮面”。碑文の記された仮面からは、目も眩むほどの白い光を放ち続けている。
ローブの少年の腕から、魔方陣が展開される。
虚空から現れたのは……“人間一人軽く吹っ飛ばせるほどの巨大な剛腕である”。
「おらヨッ……!」
青年は魔方陣から出現した“巨大な籠手”をガンダラの方へと投げつけた。
「ぐおっ!?」
片手で薙ぎ払うのは不可能。それほどの重さの槌をガンダラは両手で受け止める。
中断。ガンダラは鉄槌と共に地面に落ちていく。受け止め切れなかった。
『兄貴!?』
「余所見してる場合かよォーーーッ!!」
空から降ってくるサイネリアは、そのまま巨竜ブレロへと一直線に向かって行く。
『おおおっ!?』
ブレロは小回りの利かない体を必死に動かし回避。姿勢を崩したブレロは巨体と共に再び炎の海の中へと倒れ込む。
「なんだ、避けやがるじゃねぇか……!」
サイネリアは振り下ろし大剣はそのまま地面を殴りつけ、その周辺一帯に隕石でも降ってきたかのような巨大なクレーターを作り上げる。
「やっぱり貧乏くじだぜ。面倒ったら、ありゃしねぇ」
サイネリアは舌打ちをして、汚い股座を見せつけているブレロを睨みつける。思ったよりも小回りの利いたドラゴンを前、ゴミをみるような視線を浮かべていた。
「……すぐに片付けるって言ったんなら、一撃で決めろヨ」
もう一人の戦士。白髪の青年も足元を確認しながら着地する。
「ちょっくら期待したじゃねーカ」
盾の前。ロイブラントの放つ結界の向こう側に、その少年は降り立った。
「……もしかして」
コーテナは慌てて立ち上がる。
結界の先。盾を越えた先、その“いつの日かの少年”の元へと駆け寄った。
「もしかして、もしかしてだけど……っ!!」
思わず少女の感情は爆発しそうになる。
聞き覚えのある声。そして、相手がどれだけ偉い人物であろうとも容赦ない言い分を放つ生意気ぶり。
そして仮面から放たれた光は紛れもなく“あの能力”。アクロケミスではない、精霊皇の保管庫のカギを開くための魔法を発動した証の光。
間違いない。いま彼女の目の前にいるこの少年……いや、青年。
この数日、忘れることなどなかった“親友”のことを思うだけで、コーテナはその身を震わせる。
「……久しぶりだナ」
青年が振り返る。
「コーテナ」
伸びた真っ白な髪。特徴的な仮面。そして、何事にも大してつまらなそうな物言いを浮かばせる目つき。だけど、何処か満更でもないようなその表情は、素直ではない彼らしい一面。
“ラチェット”。
コーテナの相棒。最愛の友人が今、このグレンの村へと降り立った。
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